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金雀枝 ~エニシダ~



名前を覚えると 急に親しみが増すことって ありますよね。
人の名前もそうですが 花の名前を知ると その花がとても身近に思えるものです。






エニシダの場合は逆で 名前から近づきました。

ヘルマン・ヘッセの小説 「車輪の下」 に
・・・森と草刈場のあいだの雑草のはえた境のところには 強い金雀枝が真っ黄色に輝いていた・・・
と あります。

最初に 「車輪の下」 を読んだとき この『金雀枝』が 何のことか判らず
前後の文脈から よく土手で見かける 金鳳花みたいな雑草を想像していました。


数年前 ある農園で振り仮名つきの名札とともに エニシダを見つけたときは
旧知に巡り会えたような うれしい気持ちになりました。

さっそく一株買って帰りました。






それがいま 背丈ほどに成長して
ヘッセの描いた黄金色の小さな花を いっぱいに咲かせています。






エニシダの名は スペイン語の 『イニエスタ』 から来ており 南欧原産のマメ科の落葉低木。
茎や葉は 強心作用のある有毒のアルカロイドを含み 解熱剤に用いられる と辞書にあります。

先に植わっていたライラックの脇に地植えしたのですが エニシダの強烈な生命力に押されて
それまで 今ごろになると独特の甘い香りを放っていたライラックの紫の花が
ここ数年その香りを弱めているように感じます。

ライラックにはかわいそうですが エニシダの野性的な魅力も捨てがたく
当分このままにしておこうと思います。

虚子の句に エニシダの黄色の花の勢いを読んだ いい句があります。





えにしだの 黄色は雨も さまし得ず~ (虚子)

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