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讃岐うどん探訪



媛県新居浜市に住んでいた頃、
盆正月の休みには必ず京都に里帰りしていましたが、
その交通手段に 宇高連絡線は欠かせませんでした。
連絡線のデッキにある売店で、
潮風に吹かれながら うどんを啜りました。
幼い子供たちにも食べさせられるので、
乗船するたびに この 「讃岐うどん」 を常食しましたが、
お世辞にも 美味いものではありませんでした。

新居浜を去ってから、宇高連絡線を利用することもなくなり、
瀬戸大橋の架橋完成と同時に 連絡線自体が消えてしまいました。
デッキで啜った 「讃岐うどん」 が、まずいうどんのイメージのまま
それでも懐かしい思い出となっていました。

讃岐うどんブームも峠を越えたとはいえ、
“うどんは讃岐” の定評は覆っていません。
私の中の 「讃岐うどん」 と この「定評」 のギャップを
いつか埋めなくては、と常々思っていました。


讃岐うどんの味を本場で確かめるべく、6月10日の日曜日
思い切って探訪のドライブに出かけました。


製麺のプロ中のプロ 小林宏史氏、
製粉のベストアドヴァイザー 木下哲夫氏 という
豪華な二人の同伴者とともに。

谷川製麺所にて 小林氏 木下氏


探訪経験者 木下氏の下調べ通り、
地元に愛されている製麺所を主体に、
食べては探し 食べては探し と、
坂出・丸亀・綾歌を中心にグルグル走り回りました。


結論から先に報告します。
讃岐うどん」 の評価は 十人十色、
「讃岐うどん」 への想いも十人十色。
それでいいのだ だからおもしろいのだ と納得しました。

この結論に至るまでの説明を判りやすくするため、三軒のお店を紹介します。




宮武うどん店』。ガイドブックに常載の超有名店。

大忙しの店内あっという間に待ち客が


開店まもなく訪れたので 20分待ち位で目的のうどんにありつけましたが、
見る見るうちに待ち人の群れ。
相席になった関東弁で語る若者に 感想を聞いてみました。

二度目です。この味がたまらなくて また来ました。ここのが一番です。これぞ讃岐うどんです
と絶賛。

ところが われわれ三名の感想は
「厚みも幅もまちまち、麺肌はザラザラ、<腰> を <若茹でによる硬さ> と
勘違いしているんじゃ・・・としか言いようの無い ゴツゴツうどん」。
うーんと唸ってしまいました。


麺も好みがありますから・・・

価格は、だしかけうどん小で230円。

なにか割り切れぬ複雑な想いで、次の狙い目へ。




日の出製麺所』。
一食茹釜が奥の作業場に覗える まさしく製麺屋さんの店先で、
(たぶん)茹でたてのうどんを食べさせてくれます。


店先には長蛇の列食べ方はお好みで


待つこと30分。若い娘さんが三人、客を丁寧にテキパキとあしらっています。

ツヤツヤの麺鋏で葱をチョキチョキ


出された玉は、かどがピンと立った 肌艶の良いうどん。
長いままの葱を鋏で刻み、「ひや」 なら しょうゆ(卓上の小瓶)、
または冷めたかけだし(ガラスピッチャー)を、
「あつ」 なら ポットの温かいかけだしをかけて口へ。
かけだしは、(たぶん)かつお隠しのいりこだし。
色は薄いが、味はしっかりしています。

三人の目が輝いて遭いました。 イケる。
柔らかいが腰があり、喉越しも良好。
やっと讃岐うどんに会えた、という感じ。

価格は かけうどん小(と言っても150g以上はある)で 100円。
思わず三人声を揃えて 「
安い!」。



谷川製麺所』。

高松空港方面へ 溜池をいくつも横に見て、ここはもう高松市。
ナビが 「走行案内を終了します」 とアナウンスしたあたりには、
製麺所らしきものは見当たらず、
農作業をしていたおじいさんに尋ねたら
そこです」 と丁寧に教えてくれました。

そこです」 と指さされたところは 普通の民家、看板も それらしき気配もなく、
ぐるーっと回ってみて やっと 「
ここや」。
もう時計は3時を回っています。


製麺所前に食台があります


どんぶりを提げた地の人らしきおばさんが
3玉ほど山盛りに入れるのに対応していた お店の方に
食べさせてもらえますか」 と尋ねたら、
あと三つでお終いですけど とのこと。

わーっ ちょうど良かった と、
自分らで勝手に玉をタモに入れ 茹で湯でシャブシャブして、
自家製野菜(大根、たけのこ)の具がたっぷり入ったかけだし
(と言うより 具いっぱいの薄めの味噌汁と言った感じのだし)をかけて

ひっそりした製麺場の手前の食台で ゆっくりと味わいました。

京都人好みの味に大満足


柔らかで滑らかで 噛むと小麦粉独特の味があって、
われわれ京都人の味覚と舌触覚の好みに ピッタシコンの麺質です。
これなら 日に三度でも五度でも食べられそうです。
きっと 地の人たちに愛されている製麺所さんに違いありません。

これがほんものの讃岐うどんやで」 と、三名 意見が一致しました。
ちなみに価格は150円。




以上、三軒を例にとって報告しましたが、ネクタイの好みが違うのと同様、
讃岐うどんに対する思いも 人それぞれなのです。
たまたま好みの似通った われわれ仲間の一致した意見が、
上のような報告になったに過ぎません。

最後に、同行三人の 味わい深い(?)つぶやきを紹介して、本報告を終えます。

適切な粉()と たっぷりの加水 そしてたっぷりの熟成、
これだけで ほんもんの讃岐うどんに近いうどんができそうや

(小林氏)
それと 茹でたてを食べさせるこっちゃな
(木下氏)
そやけど この辺は雨の少ない土地柄やろ。
一に粉 二に水 三に塩 言うのに、讃岐には質のええ水あるんやろか。
まあ、ええ塩はわからんでもないけど・・・

(山田)





※もともと 讃岐地方で収穫される小麦粉は、薄力粉に近い 麩質の少ない小麦粉であったようです。
そして アミロペクチンという でんぷん質が多く含まれているため、
ぷりぷりとした舌触感と小麦の風味・甘味を、
ポピュラーな小麦粉・ASWに比べ より強く持っています。
このような 讃岐地方産小麦粉独特の特徴を持たすべく開発されたのが
「さぬきの夢2000」 という銘柄の小麦粉です
(参考資料:木下敬三著 『小麦粉の話』 旭屋出版)。
そういうと、日の出製麺所 も谷川製麺所も 「さぬきの夢2000」 のポスターが貼ってありました
(使用しているかは不明です)。


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