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書寫山・圓教寺



今年の春、ヤマサ蒲鉾・夢前工場の芝桜を見に行った帰り、少し時間に余裕があったので
近くの書写山・円教寺を尋ねました。
ついでといった気持ちで立ち寄ったのですが、その立派さに ほんとうに驚きました。

「西の比叡山」 と呼ばれている書写山は、比叡山の高さの半分もありませんが懐が深く、
円教寺も延暦寺に劣らず 壮厳ながら たいへん親しみやすいお寺だと感じました。





書写山・円教寺は、正しくは 書寫山・圓教寺と書くそうですが、天台宗三大道場の一つで、
西国三十三所第27番札所として、多くの参拝者を集めています。

実はここを訪れたとき、札所であることは まったく意識になかったのです。

姫路から夢前川を遡って北西の山中 書写山ロープウェイを山上駅で降り
ここから約1kmの参道を、両側に並ぶ33身の観音銅像を拝しながら進みます。

20分ほど山を入ると、本尊の如意輪観音を祀る 巨大な摩尼殿が現れます。
崖の上に建てられた懸造り(かけづくり)のお堂で
京大建築学科を創設した 武田五一教授の設計による 昭和の再建とのことです。
堂々とした重厚な建物です。



摩尼殿から奥の院への道を辿り、山道を下りたところで、ぱっと視界が広がります。
コの字形に配置された、大講堂・食堂(じきどう)・常行動(じょうぎょうどう)の三つの大伽藍。






どこかで見た情景です。

映画 『ラストサムライ』 で トム・クルーズが雪の日に修行する場面だったのです。




写真/円教寺パンフレットより


「三つの堂」 の空間に漂う厳かさ。
天台宗延暦寺を象徴する言葉とされる『
論湿寒貧(ろんしつかんぴん)』、
すなわち 学問の厳しさ、湿気と厳寒、粗末な衣服と食事。

この空間に佇んでいると そんな自分には経験のないはずの厳しさが
すーっと理解できそうに感じられました。



再び摩尼殿に戻って内陣を参拝後、朱印をいただく社務所に掲げてあった
西国三十三所霊場朱印掛け軸を見て 同行の妻が
「西国三十三所をまわって、あの掛け軸を埋めようか」 と言い出しました。

たいていの霊場朱印掛け軸は 中央に彩色の観音像が描かれているのですが、
その掛け軸は中央に
『南無阿弥陀仏 (書寫山主 孝啓)』 と書かれてありました。
達筆というよりも、とても温かみが伝わってくる書です。

妻は日頃 あまりこの種のことには淡白だと思うのですが、その彼女が そう言い出したのです。
この2月に母を亡くしたことが、そういう思いにさせたのかもしれません。

こうして、私たち二人の西国三十三所めぐり
は、書寫山・圓教寺から始まりました。
本来の満願寺は、岐阜県揖斐川町の 谷汲山・華厳寺なのですが、
巡礼の最後には もう一度ここ 書寫山・圓教寺を尋ねることにしようと決めました。

書寫山・圓教寺は、私たちの西国三十三所巡礼の満願寺なのです。



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