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六角堂の鐘



烏丸六角の花屋さん「花市」の前で、夕方、時間待ちしているときでした。
グォーン~~~と、近くから鐘の音が聞こえてきました。
時計をみると、きっかり5時。
きっと、六角堂の梵鐘だろう。
また聞こえます。
おんなじ間隔をおいて、また聞こえます。
真面目なお坊さんだなぁ。
見物気分で、六角通りを東に入ってみました。





鐘をひと撞きするごとに 釣鐘に向かって合掌する小坊主さん、を想像していました。
撞木の傍には、だれもいません。
竹ぼうきが立てかけられてあるのみ。

またまた、グヮーン~~~
なんと、撞木がひとりでに梵鐘を突いています。
撞木がシリンダーになっていて、空圧か油圧かで動かしているのでしょう。
それにしても、空気配管あるいは油圧配管らしいものは 見当りません。
撞木の揺れを抑えるためでしょう、天井からバーがぶら下がっていて、その先端のコロが 撞木の上を押えているだけです。

5時の鐘だから、たぶん5回鳴ったのでしょう。
撞木押え用のバーが、自動的に鐘楼の天井へ納まるのを見届けて、花市さんの門へ戻りました。

仕事柄 機械もんに興味があるので、好奇心で‘見学’できましたが、なにか 腹に収まらない後味が残りました。
鐘をひと撞きするごとに、釣鐘に向かって合掌する小坊主さん。
そんな勝手なイメージを、こんな時代に こんな街なかのお寺さんに、期待するほうが間違っているのでしょう。

それでも、梵鐘の音は、待ち時間をイライラ過ごす者にとって、まさしく福音ではありました。





トップへ Nobuhiko Yamada