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ブタがいた教室

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私たちが日ごろ食事の前に自然に出てくる 「いただきます」 という言葉が、本来 「あなたの命をいただきます」 という感謝の意味であることに気付いている人、そう感謝して食卓についている人は、今の日本では たぶん 数少ないでしょう。
私も、ただ機械的に いただきますと言っている部類です。


映画 『ブタがいた教室』 を観ました。
この映画は、冒頭のテーマを、小学6年生の教育現場である小学校の一教室を舞台にして繰り広げられる 26人の子供たちの リアルな行動と言動を通して、問いかけています。

18年前に大阪北部の小学校の新任教師が、担任クラスで生徒たちとブタを飼い、飼育をした後で そのブタを食べるという 実践教育をして話題になりましたが、その実話を映画化したものです。

新任教師・星先生役 妻夫木聡のさわやかな演技と、物語の結末が記されていない脚本を渡された 26人の子供たちの 白紙の台本から自然に生まれる 演技でない演技が、重いテーマなのに 重苦しい“お芝居”から救っています。

上映中、映画の中の子供たちと一緒になって 「ブタを食べる・食べない」 を真剣に考え 白熱して悔し涙を流し 取っ組み合いのケンカをしている気分になっている自分に気付いて、 苦笑したほどです。

小学6年生って、まだまだ子供だと思っていましたが、凄いです。
大人が こそばゆがって言えないことでも、平気で 真剣に突っ込んできます。
大粒の涙を流しながら激論しあっても、つかみ合いのケンカをしても、みんな ブタのPちゃんが大好きだという 共通の認識があるから、ただその表現方法が違うだけだと ちゃんと分かっているから、最後に多数決で決めた結論に みんなで責任をもって協力します。
大人より ずっとずっとしっかりしています。


この 「飼ったブタを食べる・食べない」 のテーマは、とても深いです。
「かわいそう」 とか 「食べるのはむごい」 とか言って 逃げられないんです。

でも、星先生も言っているように、大切なのは答えではなく、大人も子供も一緒になって、 命のあり方について真剣に考え、とことん悩んだということ、それが一番大事なことじゃないか。

子供たちの発言に ドキッとさせられることが、いっぱいありました。
たとえば、 「食べると殺すは違う」 と主張する生徒。
この子は、もうすでに 「いただきます」 の本当の意味を ちゃんと認識している、と思いました。
星先生に 「じゃあ人間って何なの? 人間は食べられないでしょ?」 と迫った生徒。
この子は、すでに人間のどうしようもないエゴを 鋭く見抜いています。

この実践教育の狙いは、「自分たちは 生きながらえるために、この大切な命を食べていることを しっかり教えること」 なのでしょうが、「生き物が生き物を食って生きている」 ことは、そう すっきりしたことではありません。

すっきりしないままにも、結局は、食事の前に 「いただきます」 と手を合わせて 感謝しながら生き物の命をいただくことしか、やりようがないのでしょう。

2時間足らずの 映画と一緒になって考えた、命の授業でした。