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年越しの希望

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分別の 底たゝきけり 年の暮 (芭蕉)


分別の底をたたいても うまい思案が浮かんでくる余地のない、ことしの暮れです。
「世情ますます騒然、かつ殺伐」 と、新聞の見出しが わびしく応えます。

なにか いいこと探そう、なにか来年に繋がる 夢のある話はないか。
そんなに焦らなくても じっくり構えればいいのに。
風邪のなかなか引かない体が、些細な不都合でも 大袈裟に構えさせてしまいます。



100年暖簾のこんにゃく製造業を営む友人が います。
浜長という、癖のないこりこりした 日本一旨いとわたしは信じている こんにゃくの老舗の、おやじさんです。

いまが 一年で一番忙しいときで、ここ数週間 電話するのを控えていたのですが、
きのう 大好物のこんにゃくを どっさり送ってくれたお礼を口実に、長話できました。

「忙しく仕事してると、浜長さんはええなぁ と羨ましがられるけど、無茶苦茶な原料高で何してるこっちゃわからへん。 便所紙ほどの儲けしかあらへんゎ」

そう ボツいたあと、彼は こう しみじみ言いました。

「そいでもなぁ 買うてくらはるお客さんがいるうちは、 ガンバらにゃなぁ。 衣食住で 食は最後の砦や。 こんにゃくは 贅沢品やあらへんもん。」


当社の仕事は 麺を作る機械を製造することで、食に関係しています。
麺も贅沢品ではありません。
当社のお客さんも、この年末 薄利でガンバってられます。

こんな時期、設備投資の意欲が涌かないのは 当然です。
だから、当社も我慢ガマンです。

でも、食、それも贅沢品でない食に関係した仕事をしていることに、誇りを感じます。
それが、年越しの希望です。



かへりみる この一年の ながれかな (もと女)