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特許の彼方に

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菊池寛の短編小説 「恩讐の彼方に」をもじって、こんな題をつけました。
特許という、人間が人間に与えた特権に対して 近頃感ずる思いを 短い言葉に表せば、こんなキザっぽい表現になってしまいました。

ここでいう特許とは、
「新規で有益な発明について特許法に基づいて独占権を付与すること、または付与された権利のこと」を指します。
その権利の有効期限は、出願の日から20年と定められています。

昨今 特に問題視されているのは 国際間の特許で、特許的に無法状態の産業振興国が 他国の特許物件を無断で使用している事項です。当事者にしてみれば、許しがたい行為です。
でも こういう行為は、まだ罪は軽いと言えなくもない。

他国で認可された特許を 法的に特許制度を持つ国の人間が あたかも自分が発明したかのごとく 自国で特許を認可されている、こういう場合が 本当の意味で 「許されざる行為」でしょう。

しかし これとても、 『他国で認可された特許』だと知りながら 自国で認可を受けた場合ばかりでは ないはずです。
いや、大半が知らずに・・・ではなかったかとも思われます。

でも 法的には、知らなかった では済まされません。
特許申請した者の罪なのか、それともそれを認可した行政の落ち度なのか。

こういう問題は、国際間どころか 自国内でも頻発しています。


出願された特許は、審査請求のあるなしに関わらず、書類上の不備だけをチェック(方式審査)して 、出願日から1年6ヶ月後に公報で公開され、審査請求のあるもののみ 審査が行われます。
その量は、いまや 想像を絶するとのことです。
特許庁の審査官が 1件の出願特許に費やせる時間は、たったの1時間と聞きます。
実用新案権に至っては、平成6年の改正法によって 『盲判』同然となりました。


特許の審査内容の主なものは、つぎの通りです。


1.自然法則を利用した技術思想か
2.産業上 利用できるか
3.出願時に その技術思想はなかったか
4.いわゆる当業者(その技術分野のことを理解している人)が 容易に発明をすることができたものではないか
5.他人よりも早く出願したか
6.公序良俗に違反していないか
7.明細書の記載は 規程どおりか



ここで いちばん問題なのは、 の項目です。
いくら優秀な審査官といえども、たった1時間くらいの審査時間で
「当業者が容易に発明をすることができたものではないか」を審査できるとは とうてい考えられません。

「とりあえずOKの審判を下して特許設定登録するから、特許公報を見て6ヶ月間の異議申し立て期間内に “当業者”が よーくチェックしてください」
穿った見方をすれば、そんなところではないでしょうか。
つまり、争いごとを煽っているようなものです。

本題に入ります。

特許などと言うと いかにも 「発明」のように聞こえますが、少なくとも工業技術に関しては、すべて 先人の知恵を拝借しているに過ぎないのです。
俺が考え出した技術だ、なんて威張っている人間ほど、猿真似がうまいのです。

特許とは、はっきり言って 金儲けのための公的権利です。
特許こそ、「規制緩和」の対象とすべきだと、わたしは考えます。

世の中を明るくする技術ならば、誰が使ってもいいじゃないですか。

人類を真の意味でゆたかにする技術は、「特許の彼方に」こそある、
そう わたしは信じています。