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高齢化日本

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65歳以上の人口が総人口に占める割合を 高齢化率と言い、この率が21%以上になった社会を 超高齢社会というのだそうです。
日本は、2007年に超高齢社会となりました。

本来、長寿は、よろこぶべきこと。
なのに 年金問題にからんで 日本全体に、高齢化は 「諸悪の元凶」のごとき雰囲気が漂っています。
ゆくゆくは姨捨山へ行かにゃ あかんのかいな、還暦祝いを迎えた世代を、冗談でも そんな気分に追いやるのは 悲しいことです。

還暦祝いを迎えた世代ばかりではありません。
男30歳代 と言えば、いちばん輝くときです。その 「輝ける年代」の日本男児が、萎縮しているのです。


『35歳1万人アンケート』が、報道されていました。
「親が自分にしてくれたことを、わが子にしてやれないのが 悔しいです」
レポーターにそう語る 高学歴の35歳男性、大家族が夢だったようです。
手取り16万円のサラリーでは、二人目の子供が欲しくても、産むことに躊躇するというのです。

「5年間付き合っていた彼女がいましたが、いまの給料では 結婚しても子供を育てる自信がなくて、別れました。共稼ぎすれば とも考えましたが、子どもがかわいそうで、あきらめました」
こう語っていたのは、福祉の仕事に就いている 35歳男性で、給料は15万円。
介護士の資格を取って 40歳までには結婚したい、そう結んでいました。

彼らは まじめな生活者に違いない、映像からは そう見受けられました。
このような現状は、とても残念です。


日本の人口が爆発的に多い世代の代表、それが いま60歳と 35歳です。
それだけに、これら世代が活気ある生活を送れるかどうかが、この日本が住み良い国であり続けられるかどうかを 決定付ける 大きな判断材料となるでしょう。
これら世代、それは まさしく、わたし達の世代と その子ども達の世代なのです。

団塊の世代の少し前を走ってきたわたしは、これまでの生活をふり返って 自戒をこめて 「なにか間違っていたぞ」と思います。
80年代 90年代が、わたしの実のある記憶から すっぽり抜け落ちているのです。
必死で生きてきたつもりでした。
が 実際は、この20年間は 夢遊病者のようなものだった、そう つくづく思います。
バブル経済に踊らされ、バブル崩壊にもてあそばれて、政治や世界情勢に疎い 仕事ばかりで視野の狭い、睡眠薬の常習犯となっていたのです。
60年代後半、ベトナム戦争にあれだけ関心を向け、ノンポリながら社会派を自認していたにも関わらず、です。

鬱病同然に 自分のなかに閉じこもっていたあいだに、世の中は 大きく変わっていました。
プラザ合意、その名前すら わたしの認識のうちになかったのです。
GATT から WTO への移行も、眼中にありませんでした。
ベルリンの壁が壊されて 巨大国ソ連邦が崩壊し、冷戦終結で 世界中にアメリカの影響力と その反発が高まっていくなか、テレビゲームのように報道される湾岸戦争も、よそ事のように通り過ぎていきました。


ようやく目が醒めだしたのは、9.11同時多発テロ事件のころからです。
安全な相合傘になってくれると思っていたアメリカは、気が付けば “わがままな保安官”になっていました。
ノーモア広島を心底願っていたはずの日本は、北朝鮮問題に触発されたように、闘争的防衛を 政治家が公然と口にするだけでなく、憲法を変えてまで 朝鮮有事に備えるべきと主張しだしました。

『箒星(ほうきぼし)が出たら、また戦(いくさ)が起こるのではないか』
生き残ったひめゆり学徒隊の語り手・比嘉文子さんの この言葉が、まだ眠気まなこのわたしを はっきり目覚めさせてくれました。

35歳の若者たちが この日本の未来に希望がもてるようにしなければ、ほんとうに日本は沈没してしまいます。
いまの閉塞状態を打ち破ることが 先決ですが、一個人の力が及ぶ問題ではありません。
有能なリーダーの手腕に期待しつつ、選挙などを通して しっかりと その能力を問いつづけるしか 手立てはないのでしょう。
彼ら若者には、歯を食いしばって 頑張ってもらうしかありません。

彼ら若者の親の世代である わたし達は、では どうすればいいのか。
その親の世代も、すでに「戦争を知らない世代」が 大半を占めるようになりました。
でも、何らかの形で、あの戦争の惨さを 若者達よりも切実に知っているはずです。
ほうき星が出ても 二度とあんな戦争を繰り返さないよう、この日本が 二度と同じ過ちを繰り返さないよう、声を出すことが わたし達世代の務めではないか、このごろ わたしは、そう 強く思っています。

ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・京都産業大学教授は、昨年12月にストックホルムで臨んだ授賞講演で 自らの戦争体験に触れ、「反戦の覚悟」を強調しました。
彼は、本当に9条が危ないという政治状況になれば 軸足を研究から反戦運動に移す覚悟を示したのです。
ひょうきんでシャイな益川教授を、学問だけでなく 人間として、わたしは尊敬します。


矍鑠(かくしゃく)という言葉があります。
足腰がしっかりとしていて 姿勢が良く、頭が冴えた カッコイイ老人のこと。
現実は 矍鑠からほど遠くても、近い未来の自分像として 気持ちだけでも そうありたいものです。
35歳の若者達に なるべく負担にならないよう、その親の世代は 体も心も しっかりしなければ・・・。

高齢化日本の現実は、見方を変えれば、あるべき日本の新しい未来像を描く 絶好のチャンスなのかもしれません。