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立って歩く人間

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どうも 花粉症に罹ったようです。
これまで、花粉症に悩まされている人を見ても、気の毒になぁとは思っても、その辛さの実感がありませんでした。
体質って、変わるんですね。
連休前ころから、くしゃみの連続で、目がやたらと痒く、鼻水ダラダラ。
辛いものですね。
「経験しないと、わからない」
ほんとに そうだと、つくづく思うこのごろです。

ところで、わたしたちの生活で 立って歩くことは、当たり前になっています。
赤ちゃんが初めてヨチヨチ歩きしたときの 愛する者たちの感動は、かわいさと同時に 無事な成長を喜ぶ感謝の気持ちからでしょう。
膝が弱って 歩くのがままならないお年寄りを、心から気の毒に思います。

でも、日常生活で忙しく立ち回っていて 自分が立って歩いていることには、ことさら何の感動もありませんし、意識にすらのぼりません。
立って歩く、このことがどんなにすごいことか、歩けない不便さといった 実利的なことだけでなく、人間そのものに関わる重要な能力であることに気づいて、びっくりします。


「あなたのからだは、あなたの人生そのものです」 という理念のもとに 『菊池体操』を編み出された 菊池和子先生は、75歳とは思えないほど 姿勢のすてきな方です。

「人間は、立って歩くようになって 脳が発達しました。どんどん脳が育って 頭が大きくなると、その重さを支えなければなりません。そのためには、頭が背骨の真上に しっかり乗っっかっていなければなりません。姿勢が大切なわけが、ここにあります。」

菊池先生のお話で、思い出したことがあります。
ずいぶん前の映画ですが、チャールトン・ヘストン主演の 『猿の惑星』で、ネアンデルタール人みたいな類人猿が振り返るシーンです。
振り返るといっても、頤のない つまり首のない類人猿は 首を曲げて振り返ることはできませんから、ピョコンと飛び跳ねて後ろ向きになるのです。

首があるのに ネアンデルタール人みたいに亀首のような姿勢の現代人を、たくさん見かけます。
きっと 背骨のどこかに、歪みが出ていることでしょう。


菊池先生は、講演には必ず 骨の人体模型を持参されるそうです。
先生は、この人骨模型を示しながら こう指摘されます。

「見てください。首と同じように 背骨しかない個所があるでしょう。胸には肋骨があり、お尻のまわりには骨盤がありますが、腰の部分には背骨しかありません。」

人間が立って歩くためには、上半身と下半身との間に 可撓性のある部位が必要です。
この可撓性部位が腰で、腰が肋骨のような骨で覆われていては その役目は果たせません。

「その代わりになるのが、筋肉、腹筋です。」

菊池先生は、腹筋の大切さを 人間のからだ全体から 解き明かされます。
腰は、字そのものが明かすように、からだの要です。
この からだの要を支えるのが、腹筋だというわけです。

この感覚は、太極拳に馴染むようになって すごく判るようになりました。
「丹田」という表現が、それを象徴しています。
姿勢、腹筋、丹田・・・
これら 自分自身のからだに注意が向くようになって はじめて、気づくこと あまたです。
これまでの生活が いかに自分のからだを蔑ろにしてきたか、そして、人間のからだの不思議、ひいては この地球上に存在するすべてのものに対する驚き、そうして、立って歩く人間の崇高さ。


どうも この時期の花粉症の原因は、イチョウらしい。
花粉症に罹るということは 新陳代謝が活発な証拠ですよ と、かかりつけのお医者さんに言われて、ちょっと落ち込んでいた気分が 楽になりました。

イチョウも 子孫を残すために 必死で生命活動をしている、それに反応して わたしのからだも 必死で新たな生命維持活動を始めた、そう思えば、くしゃみも かゆみ眼も、まぁいいか、というところです。