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21世紀のキーワード

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NKBという ユニークな会社がある。
例えば 電車内の中づりなど、交通広告をはじめとする広告代理店業務を行っている会社だ。

関西では あまりお目にかかれないが、首都圏の駅などの公共空間に描かれている 心和む魅力的な大壁絵の多くは、NKBによる製作らしい。

近年Webサイト構築やインターネット広告などの事業分野で、躍進著しい。
わたしは、この会社に注目している。
会社そのものも そうだが、この会社のリーダー、わたしの5歳年上の滝久雄社長に 心引かれる。

滝久雄氏が著した 『貢献する気持ち』(2001年紀伊国屋書店刊)という書物のなかで、彼は 「貢献心は本能である」と言っている。
貢献心という言葉もユニークだが、貢献心を 食欲や性欲と同列の本能と捉えるところに 彼の真骨頂がうかがえるし、そのことに わたしは強く同意したい。


フランス革命の真髄は、その標語<自由・平等・博愛>で表現されるが、この精神は 200年以上経ったこんにちでも 変わることのない真実である。
問題は、自由・平等・博愛のバランスだ。

平等の偏向は、ロシア革命に始まる旧ソビエト連邦の壮大なマルクス主義実験によって、その脆さを 全世界に示した。
自由の行き過ぎは、いま 世界を窮地に貶めている。
ならば 博愛かというと、歴史はそうだと答えていない。
平等の影に独裁者がいたように、博愛の影にも 宗教という魔物が付きまとう。


資本主義と自由主義が結託して幅を利かせている現代社会において、欠けているのは まちがいなく博愛であるし、人はそれを敏感に感じ取っている。
愛を掲げる直江兼続を描いた NHK大河ドラマ『天地人』が これほどまでに人気があるのは、その証であろう。
民主党党首に選ばれた鳩山由紀夫氏が<友愛>を標榜するのも、ときを得た姿勢かもしれない。

しかし わたしは、直江兼続の<愛>にも 鳩山由紀夫氏の<友愛>にも、どうも 嘘っぽい臭いを嗅いでしまう。
博愛が道具に使われてしまう危惧を、どうしても拭いきれないのだ。


14年前に起こった阪神大震災のとき、全国の多くの若者が被災地へ向かった。
なにか手助けしたい、その一念からの行動だった。
わたしは、しっかりとこの目で 彼らの貢献心を見た。
あれは、まちがいなく 人間の持つ本能であった。
愛だの友愛だのといわず 本能と割り切るところに、わたしは <博愛>の真実を感じ取る。


滝久雄氏は その著書で、「貢献心とは、けっして後天的なものではなく、むしろ先天的な欲求である」と指摘している。
貢献心は、他者に尽くすことが善い行い といった動機がないと発動できないものではなく、わたしたちが自分自身のために表現する 欲求の一つとして、きわめて自然に生まれてくるものなのだ。

「本能としての貢献心」、21世紀を救うキーワードではなかろうか。