YAMADA IRONWORK'S 本文へジャンプ
一枚のLPジャケット写真から

文字サイズを変える
文字サイズ大文字サイズ中



007シリーズ 『ロシアより愛をこめて』の冒頭シーン、ごぞんじですか。
ヴェニスの運河を 悠々と浮かぶゴンドラ。
ジェームス・ボンドに興味なければ、そんなの どうでもいいことですよネ。


他人から見れば ガラクタだけれど、本人にはどうしても捨てられない宝物みたいな、
まぁ結局はどうでもいい品物。
この画像は、昔ため込んだLPレコードを処分しようとして どうしても捨てきれなかった、
マントヴァーニの英文ジャケットに収められている写真です。



映っている女性は、『ロシアより愛をこめて』のヒロイン、タチアナに似ています。
その印象が強くて、この写真、てっきりヴェニスの運河沿いだと思っていました。

物知りで ちょっと意地悪い高校時代の友人が、「これはパリのセーヌ河だよ」と、
わたしの夢を打ち砕くように 教えてくれても、
わたしは これは絶対にヴェネチアだと言い張り続けました。


『ロシアより愛をこめて』は 大学生になって初めて見た映画で、
そのときの題名は 『007 危機一発』だったと記憶しています。

マット・モンローが歌うテーマ曲は、リバイバル公開されたときに はじめて聞きました。
ヒロイン、タチアナ役のイタリア女優 ダニエラ・ビアンキは、この一作だけだったんですね。

ヴェネチアのため息橋の下をはしるゴンドラと、切なく甘いテーマ曲と、
そしてヒロイン ダニエラ・ビアンキの謎めくような美しさ。
ヴェネチアへ行ってみたい、そこはきっと 『ロシアより愛をこめて』の世界だろう・・・
十八歳の夢でした。

例の意地悪い友人が、
「ラストシーンの ため息橋の下をはしるゴンドラの場面、あれは合成だよ」と 知ったかぶって言っても、
わたしの夢は ビクともしませんでした。


この一枚の 時代遅れの写真は、まことに個人的なのですが、
わたしの青春が濃縮されて詰まっている、
ロシアより愛をこめた ブロマイドなのです。