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含胸

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含胸、中国語で ハンシュンと読むらしい。
健康太極拳の創始者 楊名時先生が、その十二の極意として挙げられている『含胸抜背 脊貫四梢』に出てくる ことばである。
「含」は、花が満開になる前の、つぼみが少し膨らんだ状態を指す。
「含胸」は、小さな風船を膨らませるように、胸を少し膨らませる、という意味合いだ。
気をつけ!の姿勢のように 胸を極端に張るのではなく、やや控えめに ゆとりのある姿勢ということである。
同じことが、日常生活でも言える。
自分の心の中で思っていることを ぜんぶ言い切ってしまわないで、三分の余裕を残して 相手の言い分も受け容れる心の持ちようを、指しているのであろう。

含胸ということばから、わたしは 鳩胸を連想する。
豊かな胸は 女性の大きな魅力ではあるが、わたしは むしろ理知的な鳩胸が好ましい。
鳩胸は、和服にもよく似合う。
鳩胸の雰囲気は、含胸という言葉の持つ 本来の意味合いにも 通ずるものがある。

個人的な解釈は ともあれ、「含胸」ということばは、いい響きである。
わたしは、このことばに惹かれる。
胸に花のつぼみを抱えるように、奥ゆかしいなにかを宿して、ゆったりとした姿勢でいたい、と思うのである。