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従属栄養生物

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従属栄養生物。
つい最近、知った言葉です。
成長や生活に必要な栄養素の供給を 体外の有機物に依存する生物を、こう表現するのです。
人間も、もちろん 従属栄養生物です。

この言葉を知ったとき、わたしは ちょっとショックでした。
人間は、万物の霊長というけれども、もともと、自分ひとりでは 成長することも 生きていくこともできない生き物なのだ ということを、「従属栄養生物」という 耳慣れない言葉を通じて、鮮明に自覚したのです。


従属栄養生物に対比する言葉に、「独立栄養生物」 があります。
栄養素として無機化合物を摂取し、それらを原料として 体内で必要な有機化合物を 独力で合成していく生物のことです。
二酸化炭素と水とから 糖を自力で光合成する緑色植物は、その典型です。
なんだか 緑色植物のほうが、人間よりずっとずっと偉く思えてきました。


ところで、動物が呼吸する上で必須の酸素も、かっては その高い反応性のため、細胞を壊す有害な成分でした。
しかし はるか大昔、酸素の高い反応性をうまく利用すると、有機物からエネルギーを非常に効率的に取り出せることに気づいた原核生物がいました。
ミトコンドリアは、その代表です。

21億年前ころ、子孫を増やすのに欠かせないDNAを 酸化から守るために、二重の細胞膜を作った生物が現れます。
この生物は、大切なDNAを 二重膜で守られた核質内に納め、酸素を使ってエネルギーを取り出す原核生物を その外の細胞膜内に取り込んで共生していました。
この生物こそ、人間のような多細胞生物の原形で、これを 「真核生物」 と言います。
人間の先祖は、もともと阿漕な生き物だったのです。


SF小説 『パラサイト・イヴ』 は、真核生物にとり囲まれて 細胞内のエネルギー発生機関になてしまったと考えられていたミトコンドリアが、実は 遺伝子レベルで意志をもち、高等生物となった人間を 逆に支配しようとする、空想物語でした。
でも まんざら、空想とばかり言ってられないのでは、と思えてくるのです。


20世紀が 思い上がった人間の 100年なら、21世紀は、反省する人間 そして悔い改める行動をする人間の 100年としなければ・・・
人間よりずっとずっと偉い独立栄養生物である緑色植物を 摂取して生きている従属栄養生物の人間が、おのれの贅沢すぎる欲望から 森林伐採するような、緑色植物の嫌がることをしていて 良いはずがありません。

「従属栄養生物」 という言葉を知って、深く感じた想いです。