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一枚の新聞全面広告写真から

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「120年間、おつかれさまでした。そして、ありがとうございました。」

3月31日付けの新聞に載った、TOSHIBAの見開き全面広告のキャッチコピーです。


白熱電球の製造ライン群を前に、作業服姿の11人の従業員が、深々とこうべを垂れています。
その後ろ姿からは、広告用ポーズかも知れませんが、感謝の念が伝わってきます。
創業事業である白熱電球に対する 誇り高い強き思いが、彼らの背に にじみ出ているように感じられます。
いい写真です。

東芝は3月17日、家庭向けの電球として長く親しまれてきた一般白熱電球の製造を、中止しました。
創業者のひとり、藤岡市助氏が日本で初めて製造して以来、120年の歴史に幕を下ろしました。
同時に、裸電球の街灯に親しんできた世代にとって、一つの時代の象徴の終焉を意味します。

寒い夜中、下駄をはいてトイレに行く道しるべが、便所の軒先に灯る裸電球でした。
丹前をかぶって向かった坐り机に灯っていたのも、だいだい色の光を放つ 白熱電球でした。
あの輝きには、LEDの光では味わえない、あったかさがありました。

省エネの時代にあって、白熱電球が消えてゆくのは 致し方ありませんが、人の心まで しらじらしいLEDの光のように なってほしくありません。


TOSHIBAの見開き全面広告の11人の従業員と同じように、ぼくも 白熱電球に心から
「おつかれさまでした。そして、ありがとうございました。」 と言いたいです。