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貧乏人には貧乏人の戦い方がある

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「へたくそは、へたくそなりの戦い方がある。がむしゃらにいくしかない。」
田中マルクス闘莉王が、ワールドカップ初戦に臨むインタビューで、こう話していたと記憶します。

闘莉王は、ブラジル生まれの日系3世。
「全力を尽くす」精神は、開拓者である祖父から受け継がれてきたものでしょう。

ぼくは、この 「へたくそは、へたくそなりの戦い方がある。」という開き直りに、惚れました。
ワールドカップにおける日本チームの活躍と併せて、このことばに、閉塞感著しい いまの日本の未来に、一条の光をみた思いです。


これと同じ感覚の身ぶるいを感じた言葉を、 『崖っぷちのエリー ~この世でいちばん大事な「カネ」の話~』というテレビドラマの一場面で知りました。

『崖っぷちのエリー・・・』は、先週の金曜日より 山田優主演で始まったドラマです。
原作は、女流エッセイ漫画家・西原理恵子(さいばら りえこ)。
彼女の自伝エッセイ作品です。

NHKのインタビュー番組 『こころの遺伝子 ~あなたがいたから~』で出演していた彼女に、少なからずカルチャーショックみたいなものを感じていましたので、このテレビドラマが気になっていたのです。

義理の父親役の陣内孝則が、妻(渡辺えり)の連れ子である山田優に、溺愛の合間の諭しとして語りかけた言葉、
「貧乏人には貧乏人の戦い方がある。」。

美大での教材費を稼ぐためにキャバクラで働いていた山田優は、常連客(西岡徳馬)の 10万円を賭けた タバスコ一気飲み挑発に、金欲しさの一念で乗ります。
一気飲みを途中で諦めかけた彼女を、くだんの常連客が さらに挑発します。
このとき、山田優の脳裏をかすめた言葉が、義父のあの言葉でした。

そして その言葉を、思わず吐き出し、大ジョッキ一杯のタバスコを飲み干したのです。
「貧乏人には貧乏人の戦い方があるんじゃ。」


日本は、もともと貧しい国です。
ここでの 「貧しい」は、石油やレアメタルなどの資源が乏しいとか、狭い国土とか、都会での狭ぐるしい住環境とか、そういった意味での貧しさです。

戦後65年、その貧しさをバネとして、どこの国にも負けない物質的豊かさを勝ち取りました。
大阪万博の頃からでしょうか、いつのまにか日本は、自国の貧しさを誤解し出しました。
『含み資産』という言葉が、その誤解を象徴しています。

日本は、もともと貧しい国なのです。
いま そのことを、もう一度はっきり認識するべきです。
その認識から、言葉は汚いですが、「貧乏人には貧乏人の戦い方」が生まれるはずです。

あえて添えますが、日本には日本なりの豊かさが、一杯あります。
その例を、外交評論家の岡本行夫氏は、彼のWebサイトに こう記されています。

 …日本が胸を張って世界に輸出できるのは、「日本人」である。これほど善意でまじめで勤勉な国民は
   いない。
   例えば途上国での救援活動にあって、日本の専門家ほど愛情をもち、かつ大きな成果を挙げている
   人々はいない。
   ひとたび使命が与えられたときの日本人の働きぶりは抜群である。…


ワールドカップの中継でみた日本チームの感動的な働きぶり、何よりも闘莉王が吐き出すようにインタビューに答えた 「へたくそは、へたくそなりの戦い方がある」という言葉は、上記の岡本氏の指摘を ズバリ言い当てている、そこには、大きな期待と覚悟をもった希望が見晴らせる、そのように いま、ぼくは考えています。