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真似るは恥にあらず、技術者の正道なり

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諸々の技法は一日にして成らず、祖神たちの神徳の恵みなり、祖神忘るべからず」

最後の宮大工、西岡常一の著した 『木のいのち木のこころ』 の中に出てくる口伝の一つである。
自分だけの功やない、先人たちが実験を重ね、失敗を正し、伝えてきた技法のお陰や、ということである。

設計技術 あるいは製造技術というものも、自分の経験や力だけに頼っていたのでは なかなか進歩しない。
すばらしい設計といわれるものでも、過去の実績ある既成の事実をもとにして その上に築き上げられるものである。

私も、麺機に関するずいぶん多くの知恵を、すぐれた先例から学ばせていただいた。
私が麺の機械をじっくり見たのは、昭和50年 枚方の恩地製麺様(現在の恩地食品株式会社 本社工場)においてであった。
当時、恩地様の工場では いろいろなメーカーの製麺機械がところ狭しと稼動しており、それらのほとんどに何らかの形で改良を加えさせていただいた。
その際、各メーカーの長所・欠点の一部始終を知ることができたのである。

真似るということは、恥でもなんでもない。盗作はもってのほかだが、正当な模倣は 技術の継承の基本である。

最も恥じなければならないのは、せっかく立派な先人の足跡があるのに、それを知らずに あるいは 知っていても無視して、同じ過ちを犯すことである。

古い機械をオーバーホールするにしても、ここはなぜ こんなふうに曲げてあるのだろう? この部品は どうして必要なのだろう? ひょっとして不要なのでは?などなど・・・常に疑問をもって 先人の遺産に接する癖をつける。
漠然と眺めていたって、先人の知恵を理解することはできない。
考えることが、真似ることの底辺になければ、それは単に猿真似に過ぎない。
なぜ?なぜ?と考えるのだ。

ひとりの知恵などというものは 高が知れている。
先人の偉業に感謝しつつ、先人の遺産を貪欲に真似て、先人を超える設計技術を身につけていくのである。
真似ることは、すばらしい技術者になる地道な正道である。