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おてんとさま

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1か月ほど前の朝日新聞に載っていた 「公益財団法人旭硝子財団」という広告欄に、“地球環境問題を考える懇談会”の最終報告書を 希望者に無料で配布する、と書いてありました。
興味半分で申し込んでおいたのですが、先日 その報告書が届けられました。
実は、申し込んでいたことすら 忘れていたのです。


『生存の条件 ―生命力溢れる 太陽エネルギー社会へ―』と題したA5判260ページ余の、多数カラー写真が装入された本冊と、『生存の条件』を読み解くためのデータ集が、しゃれた合冊外箱に入っています。

まず驚いたのは、大企業とはいえ 一民間企業の下部財団が、一企業の損得をはるかに超えたテーマを深く追求し、うわべの損得抜きで誰かれなく その英知を広報しよう、という姿勢です。

そして さらに驚いたのは、その中味です。
この報告書は、きのうきょう ちょっとの思いつきで出来上ったものではないことは、一目瞭然です。
この報告書の基盤となる懇談会は、2006年から2009年にかけて計8回開催されたということです。

そして その懇談会のメンバー31名の顔ぶれは、いまの日本の英知を代表する方々ばかりです。
顔ぶれがいいから 内容も濃いとは限らないものですが、この報告書に関する限り、彼らの真摯な討議の様子が、この一冊の本の隅々に滲み出ています。

ところで、この報告書は、旭硝子財団のホームページ(http://www.af-info.or.jp)からダウンロードできます。
ぜひ一度、ご覧になってください。


さて、21世紀が9.11事件で始まったということは、人類にとって、代償の大きい きわめて教訓的夜明けでありました。
9.11事件を起こした側も、起こされて 暴力には暴力で向かおうとした側も、大きな大きな間違いをしていたことを、思い知ったはずです。
その代償は、あまりにも悲惨です。

20世紀前半の二つの世界大戦で、あれほど懲りたのに、また同じ過ちを繰り返している人類という生きものは、なんという種族であることか。
今度こそ目を覚まさなければ・・・


人間の強欲が産む人間同士の戦争は 言わずもがなですが、人間が人間以外の種族である生きものに対して犯してきた過ち、生きものだけでなく、森や川や海や この地球のありとあらゆる存在を ないがしろにしてきた人間の罪は、いま、異常気象という罰になって、現れています。

因果応報には違いないのですが、人間がこの地球上で生存していくには、過去に犯した過ちを深く反省し、いまこそ、人間の英知を結集して、地球にやさしく抱かれる人類の理想像の実現に向かわなければならない時です。
遅すぎるくらいですが、もう待ったなしです。

報告書 『生存の条件』は、人間が向かうべき、ひとつの正しい方向を提唱しています。
それは、「太陽エネルギー社会」です。


  ・・・産業革命前は、私たちは太陽エネルギーの日々の恵みを受けて 自然とともに生きてきました。
  しかし、産業革命以降、私たちは、太陽の恵みを長年にわたって蓄えてきた財産である 「化石
  燃料」に依存した経済活動を拡大し、毎年膨大な量の化石燃料を浪費し続けてきました。
  その結果、化石燃料の枯渇、地球温暖化という危機が迫っているのです。
  また、化石燃料の地域的偏在やそれを利用する技術の差が、生活や経済の格差といった問題
  も生じさせています。
  この危機を乗り越えるためには、太陽によって支えられている地球の自然、生物を尊重するという
  考えに立ち戻ることが必須です。
  人間を含む全ての生物が 最終的には太陽エネルギーに由来する諸資源に支えられて生存して
  きたのですから、長年にわたって蓄えられた これらの財産を使い切るのではなく、日々降り注ぐ
  太陽エネルギーの恩恵を 効率よく活用する社会を実現することが、危機を乗り越える唯一の道
  です。・・・



ぼくたちは 小さい頃、おとなが朝日に向かって手を合わす姿を見て 育ちました。
ぼくたちは、こそこそと悪い事をすると、おとなたちから 「おてんとさまが見たはるよ」と言って諭されました。
ぼくたちの心には、恐れ多い 「おてんとさま」だったのです。

太陽を 「おてんとさま」とよぶとき、そこには 知らず知らずのうちに自然に対する畏敬がありました。
それは、ついこのあいだ、半世紀余前のことです。

『生存の条件』が唱える 「太陽エネルギー社会」を、ぼくは 敢えて 「おてんとさま社会」とよびたい。
そう よぶことで、おのずと人の心に 自然に対する畏敬の念が湧きおこることを望みたい。


『生存の条件』を送っていただいた旭硝子財団に、心から感謝します。