YAMADA IRONWORK'S 本文へジャンプ
合歓の木陰

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きょうの暑さ、今年最後に ちがいありません。
ゆうべ、コオロギの合唱を聞きましたから。

この夏 合歓の木は、たぶん ちょっといいことをしました。
その木陰は 道行く人々の、強い日差しからの ささやかなシェルターになったのです。

御前通りとの交差点を東行きする 信号待ちの たいていの歩行者や自転車は、
20数歩手前の 合歓の木陰で、信号が変わるのを待っています。
この木陰、とても涼しいんです。





梅雨どきから咲き出した合歓の花は、お彼岸近くになった今も、
長い団扇のように張り出した枝の先を、淡いピンクで飾っています。

木陰の涼しさや 風車のような花の愛らしさには、困りごとも付属します。
細かい葉の掃きにくい落ち葉や 茶色に変色して落ちる花の老姿が、
風に乗って ご近所の門をきたなくします。
心苦しいのですが、隣人の寛大さに甘えています。

夜になると葉が合わさって閉じるので ネムノキというのだそうですが、
花の方は夕方から咲き始め、翌朝の午前中には萎んでしまいます。
ぼくは 花も好きですが、この寝起きする 柔らかなシダみたいな葉に、安らぎを覚えます。
風に、細い枝の根元から たゆたゆ揺れる葉の眠たげな動きは、とても優しい。

今も 残暑の強い日差しを避けて、合歓の木陰で しばし憩っている信号待ちの人たちの姿を、
この二階の設計室から 眺めています。