YAMADA IRONWORK'S 本文へジャンプ
大文字山

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眼下に、京都盆地が横たわっています。
大文字山の大の字のへその火床に腰かけて、長い時間、ぼけーっとしています。

吉田山の東肌に下宿していたぼくは、いたたまれなくなると決まって、大文字山に登っていました。
ひとりで登ることが多かったのですが、同じ下宿人の美大生といっしょに登ることも、しばしばでした。

ぼくは、ちょっとの期間、彼に絵を習っていました。
彼は、ぼくより ひとつ年上でしたが、風格は ぼくより 10歳くらい上のようでした。
その受ける印象は、揺るぎない ものの考え方に拠るものでした。

いま 腰かけている火床に、彼と並んで座って、日が暮れかけるまで、ぼくは彼の話に聞き入っていました。
彼は、本気の平和主義者でした。
マハトマ・ガンジーの 「七つの社会的大罪」を知ったのも、彼からです。




眼前の風景も、ぼくの頭の中も、あの頃と、何も変わっていません。
変わったことは、あの頃 その存在すら気にとめなかった祠、大の文字のへその火床のすぐ山手にある祠に、
いまは、そこに置かれたおりんを鳴らして、手を合せている自分の姿です。

京都で、一番眺めのいい特等席、そして、ぼくの青春の思考場所、それが、大文字山の この場所です。