YAMADA IRONWORK'S 本文へジャンプ
紙へのあこがれ

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広島に住む白石紀明君から、冊子 「近江は日本歴史の舞台裏」を送ってもらいました。
彼が、出身校・膳所高校の仲間らと研鑚を積んで成った、郷土愛誌です。

白石君とは、大学の同期ですが 研究室も違ったし、彼が広島の東洋工業へ入ってからは あの葬式で会うまで、彼については ほとんどなにも知りませんでした。
彼は、ぼくが学生時代にいちばん仲の良かった鈴村繁樹君と同じ卒業同期であり 会社の同僚でもありました。
早世した鈴村君の葬儀に 献身的に立ちまわっていた白石君の姿が、忘れられません。
鈴村君の人柄が こんないい仲間を呼び寄せたんだと、あのとき ぼくは、自分のことのよう有難く感じました。

その白石君からの今年の年賀状に、「近江は日本歴史の舞台裏」を編纂した旨が 添えられていました。
近江は、ぼくにとっても ほのかなふる里です。
この郷土誌は 是非手にとってみたく、彼に無心したのです。

父の生まれ故郷である三上山の付近に、弥生時代に大きな勢力を築いた 『三上氏族』がいたことを、この郷土誌から知りました。
なにか、とてもうれしい気分です。
白石君には、それだけでも 感謝しなければなりません。


白石君が編んだ 「近江は日本歴史の舞台裏」ほどでなくても、最近 骨のある内容のフリーペーパーが、駅や街角に そっと置かれているのを見かけます。
旅先でも、この種のフリーペーパーを見つけると、目ざとくもらって帰ることにしています。
だから 旅からの帰りバッグは、こういう紙類で いつもパンパンになります。

これらのフリーペーパーを、仕事が一段落したときを見計らって プリット糊で製本します。
製本といっても、旅先ごとやテーマごとに、大きさや綴じ方がまちまちのフリーペーパーを、自分なりの方法で ひとまとめにするだけのことです。
だから プリット糊の消費が速く、いまでは “詰め替えできる”大型スティック糊を使っています。
こうして製本したフリーペーパーは、どこにもない、ぼくだけの大切な資料になるのです。

インターネット時代に とも思うのですが、ぼくは やはり紙文化から離れられません。
白石君が、ネット上でなく冊子という形で、自分のふる里を編んだ気持ちが、ぼくには良くわかります。
紙に書かれた文字、紙に印刷された写真、これらは紙の匂いとともに ぼくの体内に仕舞い込まれる、そんな錯覚を覚えます。
自分のものになった、そんなちっぽけな所有欲に過ぎないのでしょうが…

紙への、染みついた 憧れです。