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望郷のバラード

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わたしがヴァイオリンの音色が好きだと話していたことを覚えていてくれて、気功太極拳教室仲間の梶谷さんが 素敵なものを貸してくれました。
天満敦子のCD 『Balada』と、著書 『わが心の歌・望郷のバラード』。


正直言って、ヴァイオリニスト・天満敦子の演奏を聴いたことはありませんでした。
どんな奏者なのか、全く知りませんでした。
でも、CD一曲目の <望郷のバラード>を聴いて、音楽音痴のわたしが、これはすごいと思いました。
まるで、修行中のお坊さんが 透きとおるような声で、誰かに聞かせるともなく つぶやくように読んでいる、張り裂けんばかりに悲しいお経みたい。

か細い音で 思わずプレーヤーのボリュームを大きくしたのですが、なんの それは出だしだけで、抑えた音なのに 心臓にグイグイ響く音量に、圧倒されてしまいました。

それにしても、なんと悲しい旋律なのでしょう。
その訳が、『わが心の歌・望郷のバラード』を読んで ちょっとだけ理解できました。
天満敦子さんは、文才にも長けているんです。
ルーマニアの悲しい歴史から、早世の薄幸作曲家 チプリアン・ポルムベルクの魂の叫びとして 生まれたのですね。

トランペットの音色は、男の悲しみだといわれます。
ならば ヴァイオリンの音色は、女の悲しみなのかもしれません。
ヴァイオリンの小さな胴体は、女性の体を模しているそうです。
弦は羊の腸、弓は馬の尻尾の毛、それらが擦り合わさって発する音を、胴体で孕ませる。
ヴァイオリンの音色は、女の悲しみに違いありません。


<望郷のバラード>という哀切のメロディーを知り、天満敦子という骨太のヴァイオリニストを知った悦び。
ますます ヴァイオリンの音色が、好きになりました。

気功太極拳教室仲間の梶谷さんに、感謝です。