YAMADA IRONWORK'S 本文へジャンプ
阪急電車

文字サイズを変える
文字サイズ大文字サイズ中



JR大阪駅グランドオープンにでかけました。
人ごみが苦手なくせに、ミーハー精神は衰えを知りません。
でも さすがに疲れました。


疲れると、碌なことを考えません。
疲れた自分の足が人波に流されていると、映画 『阪急電車』の冒頭に現れる 高瀬翔子役の中谷美紀の独白が、頭をよぎりました。


  名前も知らない人達は、私の人生に何の影響ももたらさないし、私の人生も誰にも何の影響も与えない…
  世界なんて、そうやって成り立っているんだ…


人のちょっとは少なそうな サウスゲートビルへ。
大丸9階紳士服売り場は、予想通り すいていました。
デパートへ行くといつも感じるのですが、紳士服売り場は いつもひと気が少ない。
男と女は半々のはずなのに、服飾市場を動かしているのは、間違いなく男ではない。

どうでもいいことに ちょっとさみしい思いをしながら、このフロアにある喫茶 「ヒロコーヒー」で一休みしました。

ぼく好みのうまいコーヒーで 疲れが和らいだころ、『阪急電車』の続きを想っていました。
あの魔法のような出会いの空想が 心をさらに和らげて、廻りが見えてくるのです。

隣のカウンターで クラブサンドイッチを不器用に食べている きっと何かに腹を立てている顔の中年女性、テーブル席の客がこぼした水を マニュアル以上の親切で始末している 鼻筋の通ったウエイター…

自分とは何も関係ないはずの他人を、不思議に身近に感じている自分。
そして、そういう自分が嫌いでない自分。
きっと、あの映画のせいです。


映画 『阪急電車』は、とてもいい映画です。
無縁社会という 厭な言葉をぶっ飛ばす力を、授けてくれます。

主役は 萩原時江役の宮本信子だと、ぼくは思います。
魅力的なばあさん、あの強さと優しさ、やっぱり阪急今津線の老婦人だなぁ。

パンフレットに、こうありました。

  (聞き手)  濁りがない人だと思います。強いからでしょうか。

  (宮本信子) ちゃんと生きてきたからじゃない?
          時江さんは、自分が何か言っても、その言葉が相手に受け入れられることを
          期待しているわけじゃないから…


なりたい、でもなれそうにない老人像です。

映画 『阪急電車』は、ほんとうにとてもいい映画です。