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工作機械

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きょう7月10日、先勝の午前中に、新しい工作機械が工場に坐った。
山崎技研のスーパーミルである。
大物用ではないが、身の丈に合った 使いやすそうな機械である。


機械屋にとって、工場に新しい工作機械が坐るときほど 胸おどる瞬間はない。
実は6年前、オークマのLB35Ⅱが当工場に坐ったとき、あぁこれがもう、私の生きている間に味わえる 最後のときめきの瞬間だろう、そう思っていた。
また その胸の高鳴りに立ちあえたことは、ほんとうにありがたいことである。

血と言うものであろう。
私の父も、借金してでも気に入った工作機械を求めていた。
父の晩年、ふだんは午前と午後に二回ほどしか工場に現れないのに、新しい工作機械が入ってしばらくの間は ひっきりなしに工場を歩き回っていたものだ。

いまは そんなバカな風潮は薄いと思うが、30年ほど前までは 工作機械の立派さで工場の ‘格’を競った時代があった。
私も、その風潮に流されていなかったとは言い切れない。
少々無理してでも 高価な工作機械を導入して、経営を圧迫することもあった。

でも本心のどこかに、父のあのうれしそうな顔を見たかったのだと思う。


資産の導入は、もちろん経営者の満足を満たすためだけではない。
それで活発な営業活動ができ、そこから適正な利潤が生まれるのであれば、経営者は積極的な攻めの投資姿勢を取るべきだ。
とくに工作機械は、ものづくり現場では利益を生む元である。

何にもまして有効なのは、そこで働く社員のモラル向上であろう。
新入社員が入ってきたときに負けず劣らず、製造現場における工作機械の導入は、社員の意気が上がる。


新卒から20年以上も勤続して働いてきた社員で、まだ担当の新規工作機械を与えていない若者がいる。
社長は、その若者に この工作機械を任せようと考えているらしい。

彼の やる気のある顔が、ほほえましい。
こんなにうれしいことはない。


新しく坐った工作機械に、どうか末長く 大きな事故なく稼働することを、祈るばかりである。