トッカン |
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テレビはいま、オリンピック オリンピックですね。
一時的にでも 閉塞な世情から抜け出したいから、テレビにしがみついているのかなぁ。
そんな自分に気づいて、一生懸命の選手たちに ゴメンしています。
オリンピック放送で、7月スタートの連続ドラマは 中休み。
その7月スタート連ドラについてのお話です。
袋たたき気味だった公務員にも 人間味のある眼差しが、7月スタート連ドラには 随所に見られるようになりました。
久々にのめり込んでいます。
なかでも 日テレ系水曜夜10時の 『トッカン』がいい。
いままでの 『マルサの女』や 『ナサケの女』とは 一味違う税務署もの。
井上真央演じる 税務署特別国税徴収官 ‘ぐー子’が 罵倒され迷いながらも、数奇な人生を送る脱税者と 人間味あふれる対応をしていきます。
税金を通して、市井の人々の機微がよく描けています。
やはりこれも、原作(ライトノベル作家 高殿円著 <トッカン-特別国税徴収官>)が しっかりしているからでしょう、話の展開に 嫌なたるみがありません。
ドラマのキャッチコピーは、「私の仕事は嫌われている」、「お金になんて殺されないで」、そして 「人生は納税だ」。
税務署の非情をなじる滞納者に返す言葉を 「ぐっ」と詰まらせる ‘ぐー子’の、ぐっとくるセリフのひとつ、「あなただって、救急車のお世話になることがあるかもしれないんです。救急車は税金で走れているんです。」
生前 父がよく口にした言葉に、「四つの署にだけは お世話になるな」があります。
四つの署とは、消防署、警察署、労働基準監督署、そして税務署。
平たく言えば、「火事の火元にだけはなるな。戸締りをしっかりしろ。人さまに怪我を負わすような交通事故をおこすな。仕事中の怪我は恥と思え。納税をごまかすな。」ということです。
細く長く生きる、ささやかな智慧です。
中小企業の経営者に限らず、庶民にとって税金は憎らしいものです。
私の40歳からの人生は、税金に縛られた一生みたいなものです。
なんでこんなに、税金を払わなきゃならないのか。
税務署と聞くだけで、虫唾が走りました。
年齢ということもあるのでしょうが、会社経営の一線を離れ 世の中の動きがある程度冷静に見えるようになって、税金に対する感情に変化が出てきました。
納税は立派な義務行為、そう 素直に思えるようになってきたのです。
働けるうちは働いて、小額でも納税者でい続けよう、いまは そう思っています。
仕事でヘマをやらかした ‘ぐー子’は、退職願を提出して郷里の神戸に帰ります。
和菓子屋の経営に失敗して 税務署にさんざん叩かれた ‘ぐー子’の父親は、税務署員というだけで ‘ぐー子’との仲は険悪です。
親子が言い争っていると、‘ぐー子’の上司である鏡雅愛(俳優:北村有起哉)から電話がかかってきます。
電話口に出た父親の角立ったもの言いを被せるように、鏡はこう伝えます。
「税務署に痛い仕打ちにあったお父さんのような親の子だからこそ、ぐー子は取り立てにも相手の立場が理解できるんです。滞納者は気持ちの上だけでも、ぐー子に救われてるんです。」
滞納者には、税金を払えるのに払わない者と 税金を払いたくても払えない者があります。
両者の区別はグレーですが、その区別に目をつぶって 差し押さえなどの滞納処分権を振りかざしてくるから、税務署員は嫌われるのです。
少なくとも、税金を払えるのに払わない者を見抜く眼力と 税金を払いたくても払えない者への理解力が、税務署員の必須資質のはずです。
脱税者に居丈高に正義感を振りかざす徴収官ではなく、ぐー子のような、弱者への心をもちながら納税を働きかける徴収官に、テレビドラマとは知りつつも
共感してしまいます。
それは、人生の大半を税金に縛られてきた者だからこそ、「人生は納税だ」というコピーの意味を ある程度理解しているからだと思います。
テレビドラマ 『トッカン』を、心から応援します。
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