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下町の太陽

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剛力彩芽の出ているコマーシャルがテレビに流れると、「出てるよ!」と家内から声がかかります。
家内も私も、剛力彩芽のファンです。
真っ正直な明るさが、ほほえましいのです。
きっと 暖かい家庭でのびのびと育ったに違いありません。

剛力彩芽を見ると、『下町の太陽』を歌っていたころの倍賞千恵子を思い出します。

目と目の間隔が<ふつう>より開いていて、切れ長の細い目、きれいな長めのうなじ、そのうなじの美しさを際立たせるショートカット、程よい上背と理知的なバスト…
以前の剛力彩芽はロングヘアだったということですが、セシルカット(この表現は時代的ですよね)がよく似合っています。

剛力彩芽は 若かりし頃の倍賞千恵子に似ている、私にはそう思えます(家内は そうかなぁ と同意しませんが)。
剛力彩芽に憂いを強調すれば、下町の太陽を歌っていた頃の倍賞千恵子にそっくりです。


高校時代の友人で、郷里の宮津で父の跡を継いで町医者に徹していた 故・浜見拓哉君のことを、下町の太陽のメロディーと連鎖的に思い出します。
彼の音楽好きは、仲間内では有名でした。
アイ・ジョージが歌ってヒットした 『硝子のジョニー』を歌わせれば、ピカ一でした。

高校の修学旅行で、熊本県宇土半島の突端 三角港での思い出です。
島原から乗り込んだ連絡船の船底では、みなが輪になって 『高校三年生』を歌っていました。
彼とわたしは、なぜか二人きりで甲板に上がっていました。
三角港の岸壁に船が着く間際、 彼は 「高校三年生もええけど、ほんまは 『下町の太陽』が好きなんや」といって、下町の太陽を アカペラでしんみりと歌いました。

浜見君が歌った下町の太陽が、三角港の物憂げな光景に、記憶の中でぴたっと溶け込んでいます。

『高校三年生』と同時期にヒットした 『下町の太陽』は、なのに なぜ私たち仲間内で歌わなかったのだろう。

そういえば、同じ作詞家・横井弘の 『あざみの歌』、あんなにきれいな歌なのに あまり歌った記憶がない。
明るさばかりを、追い求めていたのでしょう。

いま ほんとうは、憂いが求められているような気がします。
憂いが醸す落ち着きと静けさが、いま必要なのだと思います。
明かるすぎるのに、少々くたびれてきたのかも知れません。

いまは、しみじみと 『下町の太陽』を歌っています。
浜見君のおもかげを、きれぎれに思い浮かべながら。