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四万十川、賛歌

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ことしの春。
4月10日は、四万十川の日(?)。
その翌日の朝刊に載っていた、素敵な写真が忘れられません。

「永遠に清らかな清流四万十川とみなさま方を証人とし、ここに夫婦の誓いを交わします。」
沈下橋をくぐる屋形舟の船首楼に立って、沈下橋に居並ぶ祝い客らに手を振る ウェディングドレスの新郎新婦。
祝い客らが撒く紙吹雪が、若いカップルの上で舞っています。
春のメモリアルウェディング、四万十川船上結婚式のスナップです。


テレビドラマ 『遅咲きのヒマワリ』は、次週で最終回。
不作だった今年のテレビドラマの中で、『遅咲きのヒマワリ』は ‘優’をあげたい。
なにせ、四万十川の美しい映像を ふんだんに放映してくれているんですから。

かって 釣り友について、この川を遡りました。
陽射しがやわらかな、初夏のころでした。

点にしか見えない 上流の釣り友の ぶつぶつ言っている声が、風に運ばれて聞こえてきます。
地方選挙だったのか きっと選挙カーからでしょう、姿の見えない遠くの方から 「○×を―よろしく―おねがいします―」が ちぎれちぎれに流れてきます。
ゆったり流れる川面は、太陽の光を鱗のように キラキラ反射させています。
なーんにも考えない、なーんにも侵されない、至福のとき…

四万十川のウナギの味も、忘れられません。
アユ釣り人には もったいない話ですが、このあたりでは アユはウナギの餌代わり。
地獄と呼ばれる 四角て細長い木枠の仕掛け筒に ブツ切りにしたアユを入れ、新月の前夜 川に仕掛けます。
ウナギは前進するのみ、翌朝、黄色い腹をした 皮が薄く身が引き締まったのが、じっとしています。

四万十川の天然ウナギは、たぶん地元でしか食べられないでしょう。
通常の流通ルートに乗ることはなく、幻の食材のうちに入ります。
年々漁獲高は減っているそうだから、予約も効かなくなっているかも…


ドラマ 『遅咲きのヒマワリ』の副題は、「ボクの人生、リニューアル」ですね。
その舞台に四万十川を選んだのは、卓見です。
四万十川を舞台にしたドラマを作ろうとしたら 「ボクの人生、リニューアル」になった、のかも知れません。

『遅咲きのヒマワリ』の隠れたテーマは、<地域おこし協力隊>だと思います。
たまに訪れる都会人は、‘この自然ゼッタイ残してぇー’なんて言うのです。
グローバルな夢もいいけれど、都会に病んだ青年には、小平丈太郎(生田斗真)みたいな生き方もあるんだぞ、そう囁きたくなります。

冒頭に紹介した 四万十川船上結婚式のスナップ、『遅咲きのヒマワリ』を見ていると あのスナップ写真に写っている青年たちが浮かんできます。

『遅咲きのヒマワリ』のキャッチコピーをもじって、こう伝えたい。
「君たちの価値って、何ですか。」 「美しくなんて、咲かなくていい。」
四万十川が教えてくれる生き方です。