ボス |
文字サイズを変える |
  |
朝日新聞に、毎週楽しみにしているコラムがある。
天野祐吉さんの 「CM天気図」という小欄だ。
CMがやたら多くて、ドラマの微妙なストーリー展開を邪魔されて、しょっちゅうイライラしていた。
ところが このコラムを愛読するようになってから、ちょっとはCMを楽しめるようになってきた。
最近では、CMを30秒ドラマとか15秒ドラマとして観賞する余裕すら出てきている。
深津絵里と リリーフランキーの大和ハウスCMなんか、初期のものは かなりいい線いっていた(今のはちょっとマンネリかナ)。
サントリー缶コーヒー<ボス>CMの、最新バージョンがいい。
バレンタイン監督(ほんとうはアメリカ映画俳優トミー・リー・ジョーンズ)扮する宇宙人ジョーンズの、地球調査シリーズ・大相撲篇だ。
中島みゆきが歌う 『糸』をバックに、高見盛引退の特化された映像が流れるなか、大相撲の行司に扮したジョーンズが こう独白する(ナレーターは声優の故・谷口節さんか?)。
この惑星の住人は、だれもが勝利者になれる訳ではない。
ただ…この惑星には、愛される、という勝ち方もある。
ジョーンズの軍配の上に置かれた懸賞金ならぬ懸賞<ボス・レインボーマウンテンブレンド>を、手刃を切って 「ごっつぁんです」と受け取る振分親方(高見盛)。
最後は、ジョーンズと振分親方が一緒に<レイボーマウンテンブレンド>を飲みながら締めくくる。
元小結・高見盛の振分親方の、多くの人々に勇気と希望を与えた生き様を通じて、全ての働く人たちにエールを送る、という設定。
いいと思う。
愛されるという勝ち方もある、というセリフ、しびれるじゃありませんか。
この手の質のいいCMは、俳句を彷彿とさせる。
削げるものは削ぎ、余韻も残し、見るものに納得のいくインパクトで、言いたいことを盛り込む。
震災後、この種の質の高いCMが、多く見られるようになった。
CMを侮ってはならぬ、と、天野祐吉さんの 「CM天気図」の指南を得て、うれしい気持ちで自らを戒めている。
|
|