YAMADA IRONWORK'S 本文へジャンプ
常磐木落葉(ときわぎおちば)

文字サイズを変える
文字サイズ大文字サイズ中



若葉の季節。
5月は、うきうきする新緑に染まります。

でも 5月は、むかしから物忌みの月とされてきました。
新入生も 社会人1年生も、張りつめた1ヶ月が過ぎて 連休明けの5月に入ると、体調も心も少々狂い始める、ということでしょうか。
わたしも 生まれ月のせいか、5月は毎年 体調を崩しやすいのです。

山の緑は、常緑樹の濃い色を押し分けるように、淡い草色の落葉樹の新芽が、濃淡を強めて萌え広がります。
いつまでも緑の葉を付けている常緑樹よりも、秋に一斉に葉を落とし いまの時期一斉に新葉を付ける落葉樹のほうが、日本人好みなのかナ。


ところで この時期、常緑樹にも落葉がみられます。
ほとんど気づかれませんが…
古い葉の付根の脇から 新葉が芽吹き、十分に新葉が育つと古い葉は落ちます。

常緑樹は、常磐木(ときわぎ)とも呼ばれ、永遠なる若々しさの例えや、縁起の良い言葉として屋号などに用いられてきました。
そして 常磐木落葉(ときわぎおちば)は、秋の紅葉とは異なり、新緑の頃 衆目を集めずに人知れず散る、常緑樹の落ち葉を表す言葉です。

常緑樹の落葉は、新緑の頃だけではありません。
「自分が苦しい時」も、常緑樹は落葉するそうです。
自分が苦しい時とは、寒さが厳しい冬や移植直後。

葉は、水分を欲しがります。
だから、抱えていれば、その分だけ樹も頑張ります。
葉を抱えたまま常緑樹は越冬しますが、寒さが厳しい冬は自分が生き残るために、負担になる葉を落葉させて越冬する場合がある。

移植直後も同じです。
移植のために根を大きく切られ、適応するまでの間、樹そのものを守るため落葉させて、生き延びようと頑張るのです。


新緑の この季節になると、かゆい目をこすりながら、‘ときわぎおちば’を 気にしています。