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おわびから始めます

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相国寺承天閣美術館で催されていた『世界ヒバクシャ展@京都』の最終日、ぎりぎり入場することができました。
会場入り口に掲げられた<おわびから始めます>という 主催者の言葉に、わたしはこの催しの意図を つぶさに感じ取ることができました。
それを、ここに記したいと思います。



おわびから始めます
世界ヒバクシャ展 森下美歩
私は訪問介護の仕事をする中で、お年寄りからたくさんの戦争体験をお聞きしました。
多くの方が「戦争はいけない」「人間としてひどい過ちを犯してしまった」「できるものならおわびしたい」と、
心のわだかまりを残したまま亡くなっていかれました。
世界ヒバクシャ展の活動を引き継ぐにあたって、私は、“おわび”から始めたいと思います。
太平洋戦争で多大な迷惑をかけてしまった国々の人たちへのおわび。
ヒロシマ、ナガサキの被爆を経験しながら、
核実験や、湾岸戦争など世界の戦争、劣化ウラン弾の使用を止められず、
先住民族の聖地をウラン採掘や核廃棄物の投棄などで汚すことも止められず、
世界中にヒバクシャを生み出してしまったことへのおわび。
そして、「原子力の平和利用」という言葉の下で原発の建設を許し、
福島第一原発事故を引き起こして世界中に放射能をばらまいてしまったことへのおわび。
日本人として、こうしたおわびの言葉をきちんと伝えながら、現実を見つめ
共に未来を考える材料として、世界にヒバクシャの写真を展示・紹介し、
広島・長崎の原爆で亡くなった人たちをはじめ、
犠牲となった世界のヒバクシャたちの命を
無駄にしないようにしていきたいと思います。




会場出口で、この催しの主催者、森下美歩さんと少しの間、立ち話をする機会を得ました。
彼女は、展示写真を撮った6人の写真家のひとり、故・森下一徹氏の娘さんです。

立ち話をしている傍の壁面に、福島第一原発で無残な姿を晒している何号機かの航空写真が掲げてありました。
その危なっかしい建物にへばりつくように小さく、原発処理作業者の姿が、写っています。
美歩さんが、彼ら原発処理作業者との話を紹介してくれました。
彼らは、家族から もう止してと言われながらも、こうなったら自分の身はどうなっても構わない、なんとか放射能汚染を防ぐ力になりたい、そう語っていたということです。


2020年のオリンピックが東京で開催されることが決まりました。
喜ばしいことです。

プレゼンで 安倍首相は、福島での放射能汚染水は完全にプロックできています、と断言しました。
それは、原発事故処理に携わる人々のヒバクシャとなる恐れを担保にした発言です。

核と人間は、共存できない。
そのことを、放射能汚染水は完全にプロックできていますと 世界中に断言した安倍首相は、肝に銘じなければなりません。
すべての核問題は、「核と人間は、共存できない」との認識から始まるのです。

このたびのうれしいニュースで、もうひとつ気になったことがあります。
IOC理事の胸の内は 明らかにされませんから、あくまでも関係筋の推測でしょうが、日本の隣国である韓国と中国の理事たちは、2020年オリンピック開催地として日本に投票しなかったようです。

同じ東アジアに位置する 韓国・中国が、日本でのオリンピック開催を喜んではくれない。
悲しいことです。
このことを、もっと真剣に反省しなければなりません。

日本をリードする立場の人間に、森下美歩さんの<おわびから始めます>の心があれば、こんな悲しい推測はなかった、そうわたしは確信します。

しでかしてしまったことは、もう‘バクテン’することはできません。
だからこそ、しでかした過ちは、日本人として、おわびの言葉をきちんと伝えないといけないのです。

核問題が、「核と人間は、共存できない」との認識からはじめなければならないと同様、多大な迷惑をかけてしまった隣国には、おわびの言葉をきちんと伝えることから始めなければならないのです。


森下美歩さんの<おわびから始めます>の言葉に接して、このことを強く思いました。