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生きている実感

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ソチオリンピックが終わり、テレビの番組も平常を取り戻しました。


五輪であおりを食ったのが、テレビドラマのようです。
どれも低視聴率で もがいています。
各局 ソチを理由に手抜きしていると誹られているようですが、よく健闘している、とわたしはみています。

1月スタートの連ドラは、警察もんと医療もんのオンパレードの感があります。
以前 はやった 「豪腕刑事」や 「神の手をもつ医者」は、影を潜めました。
かわって、人間として苦悩する刑事や医者が、テーマになっているようです。

テレビドラマ大好きミーハーのわたしですが、好みもあるし、いまある録画機は裏番ひとつしか撮れないし、で、ひとりよがりの話になるのですが・・・
Dr.DMAT(TBSテレビ系)がいいですね。
災害派遣医療チームの物語です。

副題は 『瓦礫の下のヒポクラテス』。
十分な医療環境の整えられない災害現場で、「命をつなぐ」ことを使命にされた Dr.DMAT たちの、人間としての苦悩。
かなりの大きな確率で 身近に起こりうる状況となった映像に、現代社会の矛盾と悲しさを感じます。

ふわふわした関ジャニ∞のひとり、というイメージしか持っていなかった 大倉忠義くん、見直しました。
主人公の八雲響を、真剣にかっこよく演じています。
オリンピックのメダルと同じで、視聴率なんか気にしなくていいです。
四半期いっぱい その調子で演じきって!と、応援したい気持ちです。


視聴率の低さでは Dr.DMAT とちょぼちょぼな番組に、フジテレビ 『僕のいた時間』があります。
この四半期だけでなく、これまでの名ドラマのなかでも 十指に入るドラマだ、とわたしは思うのですが・・・
筋萎縮性側索硬化症(ALS)という、筋肉が徐々に衰えて最終的には呼吸困難で人工呼吸器をつけないと死に至る病、主題は重すぎますね。
若いから重い、と言えなくもない。
老人なら、どうなのか。
篠沢教授も この病と闘っておられることを、きのうの新聞で知りました。
恐ろしい病であることは、老若男女を問わないでしょう。

ALS はさておき、不治の病と向き合う主人公・澤田拓人の生きざまに、生きる目的を漠然としか考えていない者は、はっとするのです。
優しげな拓人が絞り出す 「生きるって、覚悟だ」「全力で生きてやる」、その迫力に、生きることに怠慢な凡人は、思い知るのです。
余計な言葉で自分を守ることに 汲々とした毎日を送る自分が、バカらしくなるのです。

澤田拓人を演じる三浦春馬、あの 『あぐり』に子役で出ていたんですね。
気配りのできる役がうってつけの、いい役者さんです。
三浦春馬、もう忘れないでしょう。
このつぎ この名前をテロップに見つけたら、きっとそのドラマを見たくなる・・・


ドラマ 『僕のいた時間』は、『遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル』と同じ脚本家・橋部敦子氏が手がけています。
目標を作ることが ボクの生きる目標かナと、彼女は拓人に言わせています。
それほど 一瞬一瞬を 懸命に生きている。

ほとんどの人は、日々 「生きている」とか「生きる目的」を意識して生きているわけではありません。
でも きっと、あのフリー演技を終えた瞬間の浅田真央ちゃんは、「生きている」実感をひしひしと味わったに違いありません。
澤田拓人も、ALS と堂々と向き合った瞬間、「生まれてきて良かった」と気づくのです。


一日が、瞬く間に過ぎてゆきます。
輝ける瞬間なんて、これから先あるんだろうか、ふとそう思ってしまいます。
生きている実感を味わいたくて、毎日 追い続けている気もします。
甘ったれの感傷です。

瞬間の命を生きればよろしい。
すばらしい瞬間がいくらでもある。
チャップリンの言葉です。

テレビドラマ 『僕のいた時間』は、生きている実感を問い直せる、上質のドラマです。