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サイレント・プア

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火曜22時、NHKドラマ10 『サイレント・プア』を、欠かさず みている。
このところ NHKらしからぬドラマが続いていたが、シリアスな問題を真正面から向き合う社会派ドラマに、久々にめぐり合えた。
事件モノをひねくり回す民放ドラマにも 飽きがきているところだったので、余計 新鮮だ。

作者は、2年前に同じドラマ10で放映された 『シングルマザーズ』を脚本した 相良敦子さん。
民間団体・社会福祉協議会に在職するソーシャルコミュニティワーカー(SCW)を題材にしたもので、具体的には 大阪府豊中市のSCWをモデルにしているという。
地域社会における人間関係が薄れてきた いまの世の中で、切実な問題である サイレント・プア 「見えない貧しさ」を、ひとりのSCWの心を通して綴る、全9話の物語。
現在、第7話まできた。

その ‘ひとりのSCW’里見涼を、深田恭子が演じている。
このドラマの深キョンは、いい。
見直しました。
セリフの少ない演技は、深キョンに向いているのかも。
それに、超美人です。

里見涼を憧れの先輩とする同僚の三輪まなか役に、映画 『最後の忠臣蔵』で清純な役柄を見せてくれた、桜庭ななみが演じている。
この役者さんも、まことに美しい女性だ。
深田恭子と桜庭ななみを見るだけでも、このドラマは値打ちがある、と個人的な感想です。


ところで、役所アレルギーというものが、つい最近まで わたしにはあった。
社会福祉協議会や民生委員は 役所の職員ではないが、いっしょくたに考えるという無知のせいで、これらの民間福祉団体も疎遠なものに、わたしには思われた。
この 無知に基づく偏見は、最近、市役所職員や民生委員の方々の日ごろの行動を、家内を通して見聞きするうちに、尊敬の念に変わってきた。
いま 家内は、民生委員の主任児童委員をしている。

京都市、とくに中京区は、民間の福祉関係団体が献身的に活動されている。
そして役所も、民間の福祉団体と協力して、手厚い福祉活動をおこなっていることも、知った。
以前の自分の無知が、恥ずかしいくらいである。

わたしの住む地域にも、いままでは想像もしなかったサイレント・プアが存在することを知って、愕然とする。
経済的貧しさではなく、孤独や孤立といった、精神的貧しさなのだ。
この状況は、まさしく、マザーテレサの 「この世界は食べ物に対する飢餓よりも、愛や感謝に対する飢餓の方が大きいのです」という言葉そのものである。
高齢化は、この状況に拍車をかけている。


第7話で、三輪まなかが担当する一人暮らしの老人が 孤独死してしまう。
救いの手を差し伸べられなかったことを悩む まなかは、自分の無力さにとことん向き合った末、尊敬する先輩の里見涼に こう誓う。
「ひとり、ひとり、届かなくても、届かなくても、心を届けていきます。」

人には、戦争をしでかすような恐ろしい心が住んでいる一方で、苦しんでいる他者を助けようと手を差し伸べる心も宿っている。
それは、だれにもある、と信じたい。
手を差し伸べるということは、とても勇気の要ることだ。
まず 家族に、そして 自分が住む地域の人々に、その勇気を向けなければ、と思う。

この国を良くしよう などと、大それたことは とてもじゃない。
せめて 自分たちが住む地域社会を、もっと暮らしやすい、もっと心豊かな町にしたい。
ほとんど実行に移していないわたしだが、気持ちだけは そう思っている。


深田恭子演じる里見涼自身も、心にサイレント・プアを抱えている。
それを、セリフなき演技で 深田恭子は見事に見せてくれている。
里見涼だけじゃぁない。
やがて誰もが、サイレント・プアにならないとも限らないのである。
もちろん、このわたしも。

ドラマ10 『サイレント・プア』は、現代の貧困を考えさせられる、そして再生の力を垣間見させてくれる、いい番組です。