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図書館

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いま 放映されているNHK朝ドラ 『花子とアン』に登場する、とても落ち着いた雰囲気の場。
教会の二階、本に囲まれた空間。
ステンドグラスから入る光が、心地よい明るさを醸し出す。
あんな空間、居心地の良い図書館のような空間が、身近に欲しい。
本好きな方なら誰もが描く、心安らぐ場だ。


京都市の市立図書館は、最近 ものすごく充実してきた。
丸太町通り御前を少し東に入った北側、アスニーにある中央図書館と、各地域の図書館を合わせて、20館ある。
巡回移動図書館もある。
火曜日と年末年始以外は閲覧できるし、中央図書館や右京図書館などは 平日は夜の8時半まで開いている。
地下鉄の駅などには 図書返却ポストが設置されているから、時間外でも返却には困らない。
ひとむかし前の図書館とは、隔世の感だ。

小学校のころ 図書館といえば、岡崎公園にある府立図書館しか 思い浮かばない。
うす暗くて、ちょっと怖そうな空間だったように、記憶している。

洛北高校生だったころ、府立大学の北側に 府立総合資料館ができた。
資料館の中に設けられた自習室は、真新しく広々としていて、まさに 「無料格安快適勉強部屋」であった。
わたしにとって、この自習室の恩恵は、計り知れない。

いま もっぱら利用しているのは、地下鉄天神川駅のすぐ上にある 右京図書館だ。
交通の便はいいし、蔵書数も多いし、なにより リラックスできる雰囲気がいい。
一人10冊まで(うちCD,DVD等の視聴覚資料は2点まで)、2週間借りることができる。
貸し出し手続きも 機械化されていて、きわめて迅速だ。
日暮しここで過ごすのも、悪くはない、と思えるほど。

毎朝 新聞だけをみにくる お年よりも多い、と聞く。
図書館が、お年よりの交流の場となりつつある。
浮世床・浮世風呂ならぬ、浮世図書館というところか。


ものすごく興味がある他府県の図書館に、武雄市図書館がある。
先日、訪ねてみた。
人口5万人の地方都市・佐賀県武雄市が、蔦屋書店に委託している図書館だ。
正確に言うと、「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、当館の指定管理者ということになる。

年中無休、朝9時から夜9時まで、開いている。
館内には、TSUTAYAの本屋があり、スターバックスがあり、持ち込み飲み物可能な閲覧カウンターがあり、パソコンでネットしても自由で・・・
心地良い雰囲気が、館内に漂っている。

東京の代官山蔦屋書店に入ったことはないが、かの “マガジンストリート”らしきものも、ある。
雑誌は、日々更新する人生の指南書だ。
マガジンストリートを ゆったり眺め通るうち、気になる雑誌が見つかれば、館内のスタバで ちょっと坐り読みもできる。
気に入れば、購入することもできる。
こんな図書館、欲しかった。

もとより 武雄は、由緒ある温泉地として有名だ。
ここに、日本一の図書館を作ろうと、燃えている青年市長がいた。
樋渡啓佑(ひわたしけいすけ)武雄市長だ。
温泉地と図書館。
一見 へんてこりんな取り合わせだが、良質な宿泊施設がそろっている武雄に、ネットカフェのような気軽さで利用できる、日本一の図書館が出来れば・・・
そうすれば、研修などを武雄で行う企業や自治体が出てきても、おかしくはない。
寂れつつある温泉街に 日本一の図書館ができれば、市民の誇りとやる気を 取り戻せるのではないか。
新しい ‘市民価値’の創造である。

100万人都市以外の地方都市をたずねて かなしく思うのは、そのさびれた姿だ。
地方都市の商店街を歩くと、何とかならないものなのか と、ヨソモノながら 怒りのような感情が湧いてくる。
営利目的が許されない地方自治体が、瀕死の町を再生するのは、容易なことではなかろう。
だが、バブル期に造られた “ハコモノ”を、スリムな運営で、町の誇りと活動の場に、生まれ変わらせても良いではないか。


武雄図書館は、まだ試験段階なのかも知れない。
その行方を、興味深く見守りたい。
図書館とコンビニと病院と観光客に恵まれた京都市に住む一市民として、武雄市を、がんばる弟のような親しみをもって、応援したい。