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エスカレーター

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スイカは関西でも使える?
先日 或る会合で、日本各地から京都に集まったうちのひとり 平塚から来た友人が、帰路の地下鉄改札口で こう わたしに問いました。
使える使える!
なんか誇らしげに、答えました。
イコカが首都圏でも使え、スイカが関西圏でも使えるということに、あぁ日本は一つだ などと、変な一体感を覚えました。

ハードでは 「東日本」「西日本」の違いはなくても、ソフト面では やはり地域性がでるんだなぁ、という事例。
エスカレーターの乗り方の違いです。

駅やデパートのエスカレーターでは、東京では左に立って右をあける、大阪では逆に右立ち左あけ、といわれます。
だいたい その通りだと思います。
問題は京都です。

京都では、右立ち左あけ でもなく 左立ち右あけ でもない。
前の人が左に立っていたら自分も左に立ち、逆に前が右なら自分も右、その時々で違う、いわば風見鶏。

ちょっと前までは、このことが なにか不名誉なことのように感じていましたが、まぁこういう生き方もアリか と、いまは肯定的です。
楽な生き方、見えない規則に縛られない 自由な生き方、言い方はいくらでもありますが、実は無難な生き方を 知らず知らず選んでいるのでしょう。

エスカレーターは、もともと 歩いたり駆けたりを想定した乗り物ではないから、堂々と真ん中に立っていれば良いはず。
急ぐ人は、階段を駆け上がればよいこと、と思うのですが・・・


先日、地下鉄東西線烏丸御池の上りエスカレーターの 混み合う乗り口で、エスカレーターに乗る順番を待っていたときのことです。
左立ち右あけの右側から 乗ろうとしていました。
直接後方の列と 右から割り込む列が、もみ合う状態です。

ちょうど列が交差する 後方の列に、初老の欧州系外人さん夫婦がいました。
その初老の紳士が にっこりした顔で、「どうぞ」と日本語で わたしに列を譲ってくれました。
ちょっと会釈して列に入らせてもらったのですが、「ありがとう」のひとことが言えません。

「どうぞ」とか 「ありがとう」とか、そういう一言が、たかがエスカレーターの乗り降りを、あったかい感じの一コマにしてくれる。
右立ちであれ 左立ちであれ、ただブスっと列についていくのではなく、このちょっとした行動が、こんなに雰囲気をかえるとは!

エスカレーターの乗り方で 人の心理の地方色を観察する ちょっとした研究者をきどっていた自分が、おはずかしい。
年間5000万人もの観光客が訪れる京都に住むものは、大それたことでなく、こういうちょっとした勇気をもたねば・・・
などと、いまもエスカレーターの前の人に追随して左立ちしながら、えらそうに考えていました。