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フールプルーフ

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上の画像は、パンテーンのシャンプーとリンスです。
右がシャンプー、左がリンスです。

この試供品を 最初もらったとき、リンスのラベル 逆さまやん、と思いました。
それに、シャンプーもリンスも、ラベルが同じじゃん。
でも、これでいいんですね。
蓋の位置も、リンスはこの向きにしか 置けません。

頭を洗っているとき、たいてい目を瞑っているから、ラベルは用を足しません。
頼りは、容器に触れる手の感触だけ。

上に蓋が付いているのがシャンプーで、頭がツルンとしているのがリンス。
これなら、目をシャンプーの泡でしみることなく、リンスを確実に選び取れます。

こういうのを、「フールプルーフ(fool proof)」 といいます。
堅苦しく言えば、「間違った操作方法でも事故が起こらないようにする安全設計」のこと。


当社の製麺機械にも、この手法が、随所に採用されています。



上の画像は、厨房用製麺機 ‘広幅ミディ’のミキサー部です。
ミキサーで練りあがった麺生地を底蓋から取り出すとき、‘寸動’操作しかできないようにしています。
‘寸動’というのは、押釦を押しているときにだけ、ミキサー軸が回転する動きのことです。

この押釦は、二つあります。
上の画像で、右上の盤上面についている黒いボタンと、左の麺機本体側面についている(非常停止赤釦下の)黒いボタンの二つ。
これら二つの黒釦を同時に押さないと、ミキサー軸は回転しません。

しかも、これら二つの黒釦は、ずいぶん離れていますから、片手で同時に押すことはできません。
つまり、両手がふさがっていますから、手を底蓋から突っ込んだ状態でミキサー軸が回転することは、ありえないのです。


「fool proof」 を直訳すれば、「愚か者にも耐えられる」。
その意味するところは、「よくわかっていない人が扱っても安全」だということです。
その思想の根底には、「人間はミスするもの」「人間の注意力はあてにならない」という前提があります。

この考え方は 一見、人間を信頼していない 一種の「性悪説」のようですが、わたしはそうは思いません。
人間の本来の姿を直視して、そういう姿を受け容れて、いつくしむ心から発する、思いやりだと思います。

フールプルーフと同じ設計思想に、「フェイルセーフ(fail safe)」があります。
機械は必ず故障するということを念頭において、故障が発生しても、常に安全側にその機能が作用する、という設計思想。
電気のヒューズは、その一例でしょう。
これも、人間の作る機械を信用していないことには違いないのですが、人間の作った機械を通して、人間そのものをいつくしむ、思いやり設計なのです。


わたしは、こういう設計思想が好きです。