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イタリア映画音楽

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イタリア映画 『道』をみたのは、小学校高学年のころです。
たしか、封切りでした。
8歳年上の長姉に連れて行ってもらった記憶があります。
若い娘のひとり外出は ご法度の時代でしたから、体よいお供だったのでしょう。

ストーリーは、ほとんど覚えていません。
陰気臭い映画、という印象でした。
(ずっとのち、ビデオで 『道』を観て、こんな凄い映画だったんだ と、わかるのですが・・・)
ただ 耳は、胸を締め付けられるような悲しげなメロディーを、その底の方に覚えていました。
ニーノ・ロータの名曲、ジェルソミーナです。
太陽がいっぱい、ロメオとジュリエット、ゴッドファーザー(愛のテーマ)・・・ニーノ・ロータの映画音楽には、ふわっとは聞き流せない 深いメッセージがあります。
ちなみに ジェルソミーナとは、イタリア語でジャスミンのことだそうです。

当時、ハリウッド映画全盛の時代でした。
洋画に魅せられたわたしは、最初は大人にねだっての映画館通いでした。
中学生になると、友人と出かけたり こっそりひとりで観にいったり、これ校則違反でした。
ほとんどがアメリカ映画で、シネマスコープの迫力あるカラースクリーンとその映画音楽に、圧倒されどうしでした。

だけど なぜか、イタリア映画音楽が心に残るのです。
それには、ちょっとした訳があります。

中学校で わたしは、運動部はバスケットボール部に所属していましたが、文化部は放送部でした。
顧問は、音楽のちょっとこわい女の先生、小林れい先生でした。
校内放送で映画音楽を流したい、そう提案したのですが、なかなか聞き入れてもらえません。
ようよう、放課後の4時から5時の1時間だけ という条件付きで、許可をもらえました。
エデンの東、知りすぎていた男、慕情、ジャイアンツ、戦場にかける橋、第三の男、OK牧場の決斗、ライムライト、ハイ・ヌーン、王様と私、めぐり逢い・・・
LPやドーナツ盤を集めたおして、片っぱしから流しました、絶対にウケると確信して。
ところが意外に 評判はイマイチで、それなら これが最後と、イタリア映画音楽特集を放送しました。
これが、ものすごくウケたんです。
ほんとうに、それが最後となってしまいましたが・・・

中学生になってすぐのころ、『鉄道員』というイタリア映画を観ました。
ピエトロ・ジェルミ監督・主演の、貧しい鉄道機関士家族のものがたりです。
サンドロという 幼い末っ子のいたいけなさが、切ない音楽にのって ぎゅっと伝わってきたのを、いまでもはっきり覚えています。
その音楽の旋律は、あのジェルソミーナに通底するものでした。
(作曲はニーノ・ロータではなく、あの永遠の名曲<ブーベの恋人>の作者、カルロ・ルスティケッリですが・・・)

『鉄道員』のあと ほぼ同じキャストで 『わらの男』、そして 『刑事』と続きます。
いずれも、舞台はローマ、それも描かれているのは、普通の市民生活。
音楽も同じ、カルロ・ルスティケッリです。

『刑事』のラストシーン、ピエトロ・ジェルミ扮する刑事に逮捕され 警察の車で連行される容疑者の恋人を追って、悲痛な叫びをあげるクラウディア・カルディナーレ。
その姿が遠のくにつれて高まる、テーマ曲<アモーレ・ミオ>。

わたしは 長らく、アモーレ・ミオの ほんとうの曲名を 知りませんでした。
シノ・メ・モーロ、「死ぬほど愛して」、ウヒャー!
バイオレスタ コッテ シノ メ モーロ---わたしは あなたと 一緒でいたい、死ぬまで。
意味もわからず、口ずさんでいました。

ジェルソミーナにはじまる イタリア映画音楽への傾倒は、いや増すばかりです。
カンツォーネと入り乱れながら・・・