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ナヴォーナ広場

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海外に旅なれた人にとっては、ローマの街歩きなど、おのぼりさん なのでしょう。
でも 社用でアジア圏しか海外にでたことのない わたしにとっては、夢のまた夢、でした。

萩原朔太郎の詩<ふらんす>をもじって 言わせてもらえば、
  ろーまへ 行きたしと 思えども
  ろーまは あまりに 遠し
だったのです。

60歳代のうちに行かなきゃ 一生むりだろう、なんて友人から宣告されると、よっしゃ 行ったるでぇ という気になって・・・
と いうわけで、ローマの街歩きが実現したのです。
13時間の空の旅に、ヘトヘトになりながら・・・


ローマへの憧れは、やはり映画 『ローマの休日』の影響が大きいです。
世代によっては、トレヴィの泉に降臨したアニタ・エクバーグの 『甘い生活』に誘われる方も多いでしょうが、やっぱり、スペイン広場の階段に腰掛けて ジェラートをなめる、オードリー・ヘップバーンでしょう。
食べ残しのコーンをポイっと捨てるのは、見たくないシーンですが・・・
なので かどうかは知りませんが、いまのスペイン広場では、飲食は一切禁止!

ローマは、京都とは比べ物にならない古さと観光スケールですが、京都と同じように、そこに人間の生活のにおいがあります。
遺跡もさることながら、この いまのローマの人々の生活に、わたしは惹かれました。

ローマの街では、歴史は現実とまじりあって 息づいています。
有名な中世の建物が いまでも事務所として使われていたり、遺跡の壁がホテルの一部だったり・・・
まるで街中が、お芝居の舞台のようで・・・

ローマの朝は市場から ということで、カンポ・デ・フィオーリ広場へ。
みたこともない 色とりどりの野菜や果物、名前のわからない かわいい生花、何に使うのか不明の カッコいいキッチン雑貨・・・

いまでもローマ市民がもっとも好きな憩いの場所、ナヴォーナ広場には、二度もたずねました。
古代ローマの競技場だった この南北に細長い広場には、噴水が似合います。
南に 「ムーア人の噴水」、中央に オベリスクがそびえる 「四大河の噴水」、北に 「ネプチューンの噴水」。
夏には 子供たちが、噴水に飛び込んで遊ぶとか・・・
広場を囲む建物も お店も、夢のようにオシャレです。
ムーア人の噴水のほとりで 恋人たちが、絵のような口づけをしていました。

ローマの夜は、ため息が出るほど美しい。
あかるい昼間には お世辞にもきれいな水とはいえないテヴェレ川の水面も、街の灯りを映し出して ローマの夜の煌きを演出します。
バチカンのサン・ピエトロ大聖堂が、やわらかい照明に浮かび上がります。




なにかの雑誌に載っていた一文ですが、たった二日のローマの街歩きを終えた いまの自分の気持ちに、ぴったりと寄り添っています。

  ローマは、おおらかな心で来るものを受け入れ、人生の晴れ舞台へと誘う。
  そして 誰にでも、時の主人公になったかのような、優しい興奮を授けてくれる。
  永遠の都、ローマの、魔法のような陶酔感。

レオナルドダヴィンチ空港からローマを離れるとき、<アリヴェデルチ・ローマ>という曲が これほど似合う情景はない、そんな感傷に浸っていました。
絶対に こんどこそほんとうに 無理な話、もう一度 ローマの街を歩いてみたい、もう一度 ナヴォーナ広場のオベリスクを仰ぎたい。