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ラーメンにモノ申す

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ラーメンは、和食でしょうか?
それはどっちでもいいんですが、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたのなら、ラーメンは?と気になります。
道頓堀にある I社の大繁盛店などは、7割がたが 外国人観光客だそうです。
それほど いまやラーメンは、日本を代表する ‘料理’になりました。

ラーメンは、個食、すなわち本来 孤独な食べ物です。
ひとりもんや かぎっ子や 夜食、に似合います。
個食としてのラーメンは、マイナスのイメージも強いですが、いまの日本の生活ありようをよく表現した、ありがたぁーい食べ物です。

ユネスコの無形文化遺産には 似合わない、と思います。
和食を代表する ‘会席料理’とは 正反対の立ち位置にある、そんな認識からです。


そのラーメンに、ラーメン大好き人間として ひとことふたこと、気づいたことを申し上げたく 紙面をお借りします。

先日、雑誌などで有名なラーメン店、S店に入りました。
店の内装は コジャレているし、店員さんの対応も まぁ普通。
カウンター越しに茹で釜を覗いて、ウヒャーっと。
底の浅い茹で釜の淵に 小ぶりなステンレスタモをいくつか引っ掛けて、一食分ずつ生麺を茹でています、時計を見ながら。

茹麺(あらかじめ茹でてあるアルファー化麺)の茹で戻しなら これでも納得ですが、生麺から茹でるのに、いくら細麺でも これじゃしっかり茹で上がりません。
それに、茹で釜が浅すぎます。
うどんやそばでも同じですが、たっぷりの沸騰湯で上下動させてこそ、生麺はしっかり茹で上がるのです。
硬め・柔らかめは、こうした たっぷりの沸騰湯での茹で時間調整で なす技です。
‘生半可茹で’とは、訳が違います。
案の定、出されたラーメンは、消化の悪そうな 粉っぽい麺でした。

これも 口コミ誌などで有名な店、K店で気になったことです。
スープも麺も 文句なし、なのですが、出されたラーメンがぬるい。
最初に器ごとスープをすするのが わたしのラーメンの食べ方なので、器の淵を触ったとたん、こりゃイカンと思いました。

冷えた器に いくら熱々のスープを注いでも、さめるのが道理でしょう。
ちょっと硬めの麺に仕上げて、盛った器でスープの熱が程よく硬めを和らげる、そのためには 器が冷たくては話になりません。
ぬるいラーメンは、気の抜けたサイダーと同じです。

京都の春日通り花屋町を少し下ったところに、塩元帥というラーメン店があります。
大阪が本部のチェーン店です。
自家製麺なのですが、残念ながら 麺機は当社製ではありません。
ラーメンそのものもウマイし、店内に貼ってある(たぶん代表者作成の)標語もフムフムものですが、強烈に感心したことが ひとつあります。

はやっている店は、やはり それなりの理由があります。
この店の繁盛の一番の理由は、入店を待つ客のあしらい方 だと思いました。

寒い時期の長い列待ちは、かなりの忍耐が要ります。
待合場所の風除けビニールカーテンや暖房は 言わずもがなですが、一番気にかけるべきは 待ち客の気持ちです。
そのキーマンは、待ち客取り次ぎ係りです。

この店の待ち客取り次ぎ係りは、見事というほかないほど、実に感じよく待ち客を倦ませない。
超美人じゃぁないけれど 笑顔がとてもかわいい女の子で、カウンター席と椅子席の空き具合と待ち客の人数を チャチャッとつき合わせて案内する、その手際のよさ。
それも、順番が先の待ち客に不愉快な思いをさせない あしらいです。
こんな素敵な店員を育てることのできる店長や代表者にまで、さすがとの感心が及ぶものです。


最後に、もうひとこと。
個人的な好みで言うのも 少々口幅ったいですが、ラーメンはシンプルがいい。
なるほど 凝った具材やスープ味も、一回目はものめずらしさで食いたくなるでしょう。
しかし、ラーメン大好き人間にとって、ラーメンはリピート食です。
もう一度食いたくなるラーメン、それはやはり、シンプルなラーメンです。
ゴテゴテしたラーメンは、こりごりです。

外国人観光客に なーんだこれ と落胆させないためにも、日本のラーメンは、もっともっと進化するべきです。