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おもしろうて、やがてかなしき・・・

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時事漫画家の山田紳さんが、マイナンバー制度を風刺して描いた漫画 「鵜のごとき心地なり マイナンバー」(朝日新聞10月2日朝刊)は、拍手モンでした。
この漫画で 「鵜のごとき心地(苦シイ)」なのは たくさんの手縄の先につながれた老若男女、と解したのですが、「鵜匠のごとき心地(エヘッヘッ)」なのは手縄を束ね持って一億総縛りと嘯く安倍総理、との見方もできそうです。
でも 後者の解釈は、鵜匠の気持ちを冒涜しています。


先日、3年前にできた 『長良川うかいミュージアム』に立ち寄りました。
おしゃれに展示されたパネルに、6人の鵜匠の代表、山下純司氏の一文が書かれていました。
    鵜のこころ 鵜匠のこころ
    今日語らい 明日又語らう
    このえにし 鵜と鵜匠の一生なり

鵜飼いの映像とともに聞こえる山下氏の肉声は、こう語りかけます。
    鵜と人は 言葉こそ通じないが、手縄(たなわ)を通じて 鵜の内臓と自分の内臓が触れ合う。
    それが 心と心のふれあいなんだ、と理解したんやわ・・・


長良川の川面がすっかり暗くなるころ、鵜飼いはクライマックスを迎えます。
「総がらみ」のはじまりです。
6艘の鵜舟が川幅いっぱいに広がり、同じ方向に下りながらの鵜飼い漁。
このときばかりは、川べりの宿の明かりは、いっせいに消されるのです。

「ほうぅほうぅ」と、鵜匠の声。
「ドンドンドン」と、船頭が棹や櫂で船べりを叩く音。
鵜と鵜匠が心をひとつにして、手縄で通わせる一所懸命さ。


今月15日で、ことしの長良川鵜飼いは終わります。
漆黒の川面に紅くゆれる篝火の影が、物悲しくよみがえってきます。

「ほうぅほうぅ」と 「ドンドンドン」の掛け合いとともに、いつまでも心に留めおきたい情景です。
芭蕉の句が、ぴったりと染み入ります。

    おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな