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下町ロケット、ばんざい

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大企業の不祥事が相次いでいます。
東芝の不適切会計、東洋ゴム工業の免震ゴム性能偽装、そして今回、旭化成建材の杭データ改ざん。

東芝の件。
なぜ、こんな大問題になる前に まわりがどうして気づかなかったのだろう、と、素朴に疑問に思います。
監査法人がいたはずです。
それに、取引銀行が どうして見破れなかったのでしょう。
私には、問題が大きすぎて、奇怪すぎて、よくわかりません。
東芝を日本企業の代表選手、と応援してきたのに、残念でなりません。

東洋ゴム工業と旭化成建材の件については、大いに言わせていただきたい。
技術に関する、いや 技術者の魂に関する問題だからです。
町工場の技術者でも、こんな恥知らずな背信行為は、絶対にしませんよ。
いや、町工場の技術者だからこそ、こんな悪質な行為は絶対にしない。
技術者の魂が、そんな行為を許すわけがない。

この はらだたしい気持ちが 『下町ロケット』の佃航平(阿部寛)の言葉で、かなり癒されました。
いま放映されている、TBS系テレビドラマです。
フィクションですが、佃航平という人物が自分を代弁してくれているようで、うれしいのです。


次のセリフは、池井戸潤の原作にない シビれる場面なので、冗長になりますが、聞き取り記載いたします。

(佃航平が経営する佃製作所の特許 「ステラエンジン」を巡って ナカシマ工業と争っている裁判法廷で、原告の佃航平が証人喚問を受ける場面)
〔中川弁護士(ナカシマ工業の顧問弁護士)(池畑慎之介(ピーター))〕
 問題は、どっちが先に特許を取得したか、なんですよ。
 あなた、経営者だったらそれぐらいのこと・・・そうか、あなたは元々 技術者でしたね。
 7年前、あなたが開発したエンジンのせいで、ロケットが墜落したとか・・・
 ほんとうですか。
〔神谷弁護士(佃製作所の新任弁護士)(恵俊彰)〕
 異議あり。
 ただいまの発言は、本件と一切関係なく、証人を侮辱する質問です。
〔中川弁護士〕
 佃製作所の技術開発力を推しはかる上で、極めて重要な事実です。
 はたして佃製作所に、それほど優れた特許を得る力があるのでしょうかぁ?
〔裁判長(上杉祥三)〕
 異議を却下します。
〔神谷弁護士〕
 しかし、裁判長・・・
〔佃航平〕
 かまいませんよ 先生、ほんとうのことですから。
 中川弁護士、あなたが言うように、わたしは かって、ロケットエンジンの開発に携わり、失敗しました。
 でもね、あの失敗があるから、今がある。
 どんな素晴らしい発明でも、たった一つの成功の裏に、何百 何千という失敗がある。
 その積み上げられた失敗を、技術者たちの報われなかった努力を、バカにすることは許さん。
〔中川弁護士〕
 失敗は失敗でしょう。
 それらしいことを言って、技術者としての能力の低さを正当化するのは やめていただきたい。
〔佃航平〕
 誰が正当化した!
 あんたみたいな偉そうな弁護士さんはどうか知らないが、技術者はみんな、自分の無力さを知っているよ。
 毎日、壁にぶつかってばかりだからな。
 だからこそ、必死で腕を磨いて、徹夜で開発に没頭して、次こそは と信じて、ものを作り続けてんだ。
 なんでだか、分かるか?
〔中川弁護士〕
 ・・・?
〔佃航平〕
 おもしろいんだよ。
 きのう できなかったことが、きょう できるようになる。
 きのう わからなかったことが、きょう わかるようになる。
 それを、自分の技術でやれたら、最高だ!
 (勝手な発言は控えていただきたい、という中川弁護士の発言に対し、裁判長は、いや もう少し聴いてみたい、本特許侵害訴訟において 佃製作所の技術に対する考え方を知ることは 決して無駄だとは思いません、そう述べて、証人は続けてください、と佃航平を促す)
(神谷弁護士の方をみて、その頷きを確認してから、佃航平は どう続けようかと、一瞬 迷うが、娘の利奈(土屋太鳳)が今朝アイロンをかけてくれたカッターシャツの衿に触れながら、話し出す。アイロンの技術の進歩を 一通り述べたあと、彼は、アイロンという技術のおかげで、けさの娘の優しさに気づくことができた、これこそが 技術の力だと思う、と。技術は人を支える、人間社会を豊かにする、人を幸せにする。これこそが、技術のほんとうの力じゃないか、と。)
(中川弁護士が 佃の発言をあざ笑うよな言葉を浴びせたのに対し、裁判長は 中川弁護士の発言を逆に慎むよう注意する。佃航平が続ける。)
〔佃航平〕
 中川さん、あなた さっき言いましたよね、大事なのは どっちが最初に完璧な特許をとったか。
 でもね、私が きょう、娘の優しさに喜びを感じたのは、特許のおかげなんかじゃない。
 この服のシワを もっと綺麗に もっと簡単に、どうしたら伸ばせるか。
 ただ それだけを思って、アイロンを作り上げた技術者の思いが、あったからだ。
 そういう技術者を守るために、特許はあるべきなんだ。
 それに振り回されて、金のことしか考えられなくなったら、そこに技術の進歩はありません。
 そんな特許なんか、ない方がマシだ。
 特許だの買収などのことしか頭にない あなたたちに、ウチより あの技術を先に完成させることなど、
 絶対に ゼッタイに出来るわけがない。
 特許侵害をしたのは、ウチじゃない、ナカシマの方だ!
(熱くなりすぎた自分に気づいた佃は、少し間をおいて、裁判長の方に向き直り、こう断言する)
〔佃航平〕
 裁判長、これだけは言っておきます。
 たとえ この裁判に負けたとしても、ナカシマに特許を奪われたとしても、屁でもありません。
 培ってきた技術力だけは、決して奪えない。
 正義は 終わりにあり、だ!


下町ロケット、バンザイです