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地蔵盆

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京都には、古くから地蔵盆という 町内ごとのお祭りがある。夏休みも終りに近づいた頃、最後の遊びのイベントだ。

昔は一番の人気は紙芝居。鶏や鳩の飴細工をしゃぶりながら 紙芝居を見るのが、数少ない娯楽の中の筆頭であった。盆踊りが併設される町内も多かった。
なかなか手につかない夏休みの宿題を地蔵盆が済んだらかかるからと、親に言い訳する最後のチャンスだった。

8月23、24日の地蔵菩薩の縁日に行うのが慣わしであった地蔵盆は、最近は世話をする大人の都合で 20日前後の土日にやることが多くなっている。1日のみの開催という町内も多い。

2日かけてやっていた頃は、夜は盆踊りや花火があったりして、この日ばかりは子供たちも 夜更かしが許された。
楽しかった。
親が寄進してくれた 自分の名前が入った提灯の明かりを見上げるのは、ちょっと誇らしい気持ちになったものだ。

近頃 街中の町内は子供の数が減り 年寄りの数が増えて、地蔵盆は老人会のようになってきた。
地蔵盆は、外に向けてのお祭りではなく あくまで町内の人たちの 自主運営で成り立っているから、高齢化で町内によっては縮小 あるいは廃止せざるをえなくなってきている。
お地蔵さんは子供の守り神だが、年寄りのお地蔵さんもあってもいいようにも思うのだが。

この町内の地蔵盆は、8月19日の日曜日に行われた。
近くのお寺さんからお坊さんを呼んでのお念仏から始まり、数珠まわし、クイズ、輪投げ、ビンゴゲーム、おやつわたしと進み、お昼にはランチバイキング、午後に入ってゲームに福引と、例年通りのプログラムをこなしていく。

ただこれだけのことのようだが、準備をする担当の人たちの苦労はたいへんである。
町内会長を中心にその年々の役員が、福引の景品や おやつの買出しに始まって、前日から会場の準備、当日のお運びや氷などの買い足し、そして後片付けと、大忙しだ。
町内の人たちが力を合せて、ひとつの行事をやり遂げる唯一のチャンスでもある。
町内在住の子供は少なくても 当日参加のお孫さんもかなりいて、暑い盛りの日中ながら、それなりの盛り上がりと 楽しさで満たされた。

たった一日の心の通じ合いが、ひょっとしたら 阪神大震災のときに見られた「遠くの親戚より近くの隣人」 の ありがたさを知るきっかけになるかもしれない。

地蔵盆は、しんどいけれど やり甲斐と意義のある行事だと、つくづく思う。