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まだ誰も責任とってねぇんだから

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はっきりしておかなければならない。
5年前の東北地方東海岸を襲った津波は 天災だが、福島第一原発事故は 人災である。

原発は人間が作り出したものであって、事故が自然の津波で生じても、その責任は、原発を作った人間にある。
予測不可能で想定外だったとして、逃げることはできない。
原発は原爆と同じなのだから、万一 予測不可能な自然災害が生じたときの甚大な被害は、想定内である。

このところを この5年間はっきりしてこなかったから、あの不幸な阪神淡路大震災からの立ち直りに抱いた希望が、東北大震災には 生まれてこない。
どうしたらいいのか、はっきりしている。
原発を作った人間が、もう金輪際 原発を作りません と宣言すればいいのだ。

だれが宣言するべきなのか、決まっている。
宣言すべき者は、原発を始めたときの政権担当者であり、今の政権を担っている自由民主党であろう。
それができないのは、日本の大不幸である。


2月20日付けの朝日新聞朝刊に載った 「償えないもの」という記事。
福島県須賀川市で農業を続ける、樽川和也(たるかわかずや)さんの、怒りである。

想像でしか言えないが、農業者にとって命に次いで大事なものは、土だろう。
いや、土は命そのものかもしれない。
その土を、福島第一原発事故で汚染された。
事故後まもなく、父親を自死により失った。

除染の実態は、素人目でも芳しくはなかろう。
金で償えないにしても、やはり賠償の内容が気になる。
樽川さんの言うことがほんとうなら、唖然とせざるを得ない。


   ---このところ原発が次々と再稼動しています。
   「しばらく日本は原発ゼロだったけど、その間に夜 真っ暗になったことあった?
   電気、間に合ってたんじゃねぇの。
   原油のコストはかかったかもしんねえし、原発のほうが燃料代は安いかもしんねえ。
   でも事故が起きたら、これ片付けんのに、いくらかかんのって。
   お荷物だよ、これ、ほんとに。
   もう一つどこかで原発壊れたら、どうなんの、この国。
   税金上げて済む話かえ。」

   ---いまの気持ちを誰に伝えたいですか。
   「声上げねえで黙ってたら、楽かもしんねえ。
   だけど俺は、おやじのことでメディアに目を向けられる立場でしょう。
   ほかの農家のかたで、俺みたいに、おがしいって思ってる人は大勢いるんです。
   そういう思いを訴えねえでいることは、やっぱできねえんすよね。
   それは、ずるい。」
   「だから映画に出たの。
   特に原発立地してるとこの農業の人に映画を観てほしい。
   事故が起きたら、どうなるのか知ってほしい。
   人が作ったものはいつか必ず、ぼっ壊れんだ、自然の力にかなうわけねえんだって、おやじが言ってた通りになったんだから。
   して、5年もたって、まだ誰も責任とってねえんだから」

樽川さんは、ドキュメンタリー映画 『大地を受け継ぐ』で 苦悩を訴えている、という。
どう責任とれば、樽川さんの心がはれるのだろう。
樽川さんの心がはれることは、どうしようが たぶん、ないであろう。

希望が抱ける方法が、一つある。
それは、金輪際 原発を作らないこと、そう施政者が誓うこと。

そうじゃぁないですか。
原発廃棄物処分ひとつ考えれば、答えは、はっきりしているじゃないですか。