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春クールのテレビドラマから

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野際陽子さんが亡くなった。

テレビドラマには欠かせない女優さんだった。
脇役が多かったが、彼女が出演しているだけで、そのドラマが引き締まった。

福島第一原発事故直後のインタビューで 「原発からでた放射能を無害にする技術ができない限り、原発はありえない」と語っていた。
その、短いが極めて的を得た合理的な発言を聴いて、いっぺんにファンになった。
私の苦手な英会話がうまい、私ができない180度開脚をやすやすとこなす、何よりも あの知性的な美しさに惚れ込んだ。

心よりお悔やみ申し上げます。


ところで、春クールのテレビドラマは、見たいと思うものが多かった。
その中で、『CRISIS』(フジ系)と 『小さな巨人』(TBS系)について、感じるところを 小さく発信します。

ともに、国家権力とそれに翻弄される公務員とのバトルが、現在ただいまの世相を暗示するかのようで、はまってしまった。
ただ、最終回で両者に大きな開きが出た。

10回前後のいいなぁと観続ける連続ドラマで いいドラマだったと決定づけるのは、最終回である。
『小さな巨人』は ガッカリ、『CRISIS』は ヨッシャ。

現実世界でウヤモヤにされるのに飽き飽きしている視聴者に、せめてドラマの中だけでも 国家権力に最後まで凛々しく立ち向かう姿をみせてもらいたい。
なのに 『小さな巨人』の香坂(長谷川博己)がみせるジ・エンド直前の姿は、一体なんなのだ!
父親(元警視庁捜査一課長)が絡む17年前の事件をウヤモヤにして、香坂は憧れの捜査一課長にのし上がる。
警察官の正義を貫くのではなかったのか!

金城一紀氏原案・脚本の 『CRISIS』(公安機動捜査隊特捜班)の最終回は、暗い。
主人公たちが踏み越えてはならない、テロ実行への予感。
暗いが、裏切られなかった という安堵感に満たされた。

視聴者は、安易なハッピーエンドを望んではいない。