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プレバト冬麗戦

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ダラダラと見るしかなかった正月のテレビで、4日放映の人気番組 『プレバト』の 俳句部門 『冬麗戦』には、引き込まれた。
名人・特待生だけのタイトル戦である。

お題は、まっ白な雪とまっ青な空だけの写真、『雪の地平線』。
発想がポンポン飛び出すお題でしょ!と、夏井いつき先生。
生徒は、梅沢富美男 名人7段、FUJIWARA藤本 名人6段、Kis-My-Ft2横尾 名人2段、フルーツポンチ村上 名人初段、NON STYLE石田 特待生2級、Kis-My-Ft2千賀 特待生2級、中田喜子 特待生3級、千原ジュニア 特待生5級、の8名。

結果は、大番狂わせの順位となる。
一位 Kis-My-Ft2千賀、二位 FUJIWARA藤本、三位 梅沢富美男、四位 中田喜子、五位 フルーツポンチ村上、六位 NON STYLE石田、七位 Kis-My-Ft2横尾、最下位 千原ジュニア。

コミッショナーの浜ちゃんが、絶妙の順位取りをする。
だから、見ている方もハラハラ。
生徒の8人は、もっとハラハラだったろう。
皆、ものすごく勉強しているに違いない。
レベルが高い8名の争いは、夏井先生の鋭い批評とあいまって、俳句心に乏しい者にも興味津々であった。

冗長を避けて、三位までの作品のみを 夏井先生の解説とともに紹介する。

一位の本命だった、三位の梅沢富美男作品から。
   ざくざくと 空切りひらく 雪下ろし
夏井先生:陳腐なオノマトペ 「ざくざく」を、ちゃんと神経を使った語順で しっかりと組み立てれば、新しい句として成立できる、という見本のような句です。ただ、発想が二位の句に比べて貧弱、完成度は高いが発展性のない句。

二位のFUJIWARA藤本の作品、夢があって ほのぼのと かわいい句。
   船長の 側にペンギン 日向ぼこ
夏井先生:『雪の地平線』の写真で、ペンギンを考える人はいると思ったが、何が私にとってびっくりしたかと言うと・・・「日向ぼこ」は冬の季語ですね。この季語は、むしろ じいさんばあさんみたいなイメージが強い、それが南極ですよ これ。南極へ行ってる船長と南極のペンギンが 確かに日向ぼっこするなぁと思って、その発想の飛躍は 褒めるしかないでしょう。「側にペンギン」の極寒の地で 「日向ぼこ」、驚きました。発想が本当にすごい、さすがです。

そして、一位の句、誰も一位になるとは考えなかった作者、Kis-My-Ft2千賀の句。
   雪原や 星を指す 大樹の骸(むくろ)
「さぁ これは どういう句ですか?」との浜ちゃんの問いに答えて・・・
千賀:「雪原や」で お昼のイメージになるんです。その後に 「星」がくる、ということは 夜のイメージになる。その後に 雪の中に大樹がある、二つの発想を この写真の中に入れてみたんです。「大樹の骸」が 「星を指す」と言うのが、僕の中で こう、大樹が死ぬ前に 星に憧れて死んでいくという ちょっとロマンチックなイメージを最後に持っていって、映像を残したまま発想を転換する というのを、今回すごくこだわって作ってみました。
夏井先生:自分の句を とても理論的に解説できましたね。あなたは今まで、自分の句のいいところをきちんと説明できない人だったですもんねぇ。
千賀:今までずっと背伸びしてて、いろんな技術を入れ込んで、全然すなおな句が作れなくて、今回 ほんとに いままで自分の中で一番すなおな句なんです。
夏井先生:まさかあなたの句とは 思わないじゃない、ほんとに。さぁ いいところをもう一回おさえますよ。「雪原や」、広~い雪の原ですよ。「や」で強調します。昼だと思います。昼だと思ったら夜になる。そして 「星を指す」、星を指している人物がいるのかナと思わせる。すると 「大樹」、大樹が星を指すように そそり立っている。だと思った瞬間に それは「枯れた骸」であると分かる。一語一語出てくる度に、光景が少しづつ動きながら、全部読み終わると、清浄とした冷たい世界の中に大樹と星とが 美しい絵画のように一枚に入っていきますね。しかも調べも5,5,7 なんです。この 5,5,7 という調べが 実は、美しい緊張感を一句の中に編みだしているんです。よく勉強したことを丁寧に・・・よくやった!あんたが泣くから、もらい泣きしちゃった。頑張った子は、偉い。ほんとうにエライ!文句なしの一位ですよ。おめでとう!

千賀くんの 切れ長の細い目に、涙が溢れる。
目指す大学の入試に みごとに合格したような、心底からの うれし涙。
爽やかである。
若いって、いいですね。
わたしも 思わず、もらい泣きしていた。