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百万本のバラ

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清少納言は、こう言いました。

「 ただ過ぎに過ぐるもの。帆をあげたる舟、人の齢(よわい)、春夏秋冬。 」

人の齢は、帆をあげたる舟のように あっという間に と言うほどではないですが、九十日という 春夏秋冬の移り変わりに 感覚的には近く、この感覚は、年を重ねるほどに 現実味を帯びてくるもののようです。

四時の移ろいを おのれの変わり身に重ね合わせて、秋の深まりを しみじみと いとおしむこの頃です。
と、まあ、じじ臭い前置きは さて置き・・・


「百万本のバラ」 という曲が、はやった頃がありました。A・VOZNESENSKIJ 作詞、R・PAULS作曲の、加藤登紀子が歌ってヒットした曲です。
先日、久々にこの曲を聴きました。

さい帯血バンクの奉仕活動を行っている NPO “DREAM TOY'S” のリーダー、伊藤タカ子さんという シンガーソングライターのチャリティーコンサートで、彼女がこの曲を歌っていました。
もちろん 加藤登紀子の比ではありませんが、さらりと でも 情熱的に歌いあげて、かってこの曲からもらった ほとぼしる感情を思い出させてくれるに十分な 雰囲気でした。

倉本聰の 「北の国から」 のなかで、不倫の子を身ごもった蛍を 献身的に愛する幼馴染の正吉が、思いを蛍に伝えるのに 部屋いっぱいを ひまわりの花で埋め尽くす場面がありました。「百万本のバラ」の曲を聴くとき、きまって この場面を思い出します。
私は、北の国からの登場人物の中で、この笠松正吉のキャラクターが一番好きです。
ないものねだり、ということなんでしょうが、ひたむきに一つのことに夢中になれる男に憧れます。

「百万本のバラ」 を聴くとき、いままでも、たぶんこれからも成し遂げられない “体内ロマン” とでも言うしかない感情が、湧き上がってきます。

ところで、 「千の風になって」 という曲がはやっています。
とりわけ、熟年層に熱烈に支持されているようです。
たまたま、伊藤タカ子さんが これらの二曲を続けて歌ったので 思うのですが、また、これらを比較すること自体 無粋だとわかっているのですが、「千の風になって」 のあまりにもきれいな歌詞に酔いながらも、もし正吉やったら お墓の前で 「何で先に死んでしもたんや、あほんだら!」 言うて泣きわめくんやないか、それもいいんやないか、私はそのほうが性に合っている気がします。

私は、死ぬまで 「百万本のバラ」 に憧れて、くたばっていくんだと思います。