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七五三 ある光景

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11月11日の日曜日、上の孫の七五三で 平安神宮に詣でた。
ほんとうの七五三詣りは 11月15日だが、父親や母親のお勤めの都合もあろう 今日に詣でる家族連れで、平安神宮は朝から賑わっていた。
午前中は なんとか天気ももってくれて、無事 お参りを済ますことができた。

七五三は 着飾った子供たちも晴ればれしいが、お父さんお母さんがみな若くてきれいだ。
それに おじいちゃんおばあちゃんが まだ元気だから、ほとんどの組が たくさんの家族連れとなる。
まったく和やかな 華やいだ光景だ。
子の七五三は、若い両親にとって 人生でもっとも輝いている瞬間かもしれない。


そんな雰囲気と場違いの光景が、気になった。
七五三のご祈祷受付近くの 白虎楼の石段に、うずくまって泣いている若い母親がいた。
男の子が、心配そうに その母親の肩に手を置いている。
ベビーバギーを押した父親らしき青年が、近寄って行った。
夫婦喧嘩のようには 見えない。
若い父親は すまなそうに、泣いている母親を慰めている。
父親の手に、切符みたいなものが見えた。
母親が 振り返って 男の子の頭をなでながら、ごめんね ごめんね と謝っている。
この親子は 決してみすぼらしい服装ではないが、七五三詣りには 似つかわしくない恰好をしている。
おじいちゃんおばあちゃんらしき人たちも、いないようだ。

娘婿のご両親も一緒に、孫中心の昼食を 話題も孫中心で 楽しく和やかに済ませ、場所を娘たちの家に移して 近々引っ越すマンションの話題で 夕方まで話し込み、あたりが暗くなって ようやく帰宅した。

帰宅して、平安神宮で気になった あの親子のことを 家内に話してみた。
案の定、家内も気になっていたらしく、「あれはきっと、きのう(11月10日)にあった祭典に参加するために 日を間違えてお参りしたのに違いないよ。きのうは、抽選で特典の七五三詣りができる日だったみたい」 と、勘鋭く話していた。
家内の勘が正しければ、あの父親が手に持っていた切符は、その抽選の当り券だったかもしれない。
その当り券で、ご祈祷料も要らなかったのかもしれない。
ご祈祷券の半券で、子供が喜びそうなおもちゃも もらえたのに。


世の中には、周りのみんなから祝福されて生まれてくる子もおれば、訳あって おじいちゃんおばあちゃんにも祝ってもらえない七五三の子もいる。
きっと 経済的にも苦しかろう。
でも、子を思う親の気持ちに 変わりがあろうか。

どうか、あの親子にも しあわせな瞬間がありますように、と 願わずにはいられない。