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ねんぴかんのんりき

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こうやこうぼうだいし (高野弘法大師)
このこだいて こひいて (この子抱いて粉挽いて)
このこのめに こがはいって (この子の目に粉が入って)
こんどから このこだいて こひこまい (今度からこの子抱いて粉挽こまい)


こう語りながら、上の孫を寝かしつけます。
孫は、じーじのおうちに来たら この「うた」を聞いて寝なしゃあない、と思っているようで、お昼寝の時間になると、私の腕に抱かれて おとなしく眠ってくれます。
この 「うた」は、祖母が 私を眠りに導いてくれた子守唄です。

幼子は、些細なことで よく笑います。
おやかまっさんどす(お騒がせします、お邪魔します)こう言って相手をしてやると、孫たちは体全体で笑いこけます。
祖母が日常使っていた 死語のような こういう言葉遣いが、知らず知らずのうちに 口をついて出てくるのです。

小さかった頃は、私は よく熱を出しました。
祖母が 枕もとで唱えてくれた言葉を、夢うつつで聞いていました。
ねんぴかんのんりき ねんぴかんのんりき ねんぴかんのんりき
このあいだも 夜中に孫が高熱を出したとき、車で第二日赤病院へ連れて行く途中で、私はこの呪文を 思わず唱えていました。

ねんぴかんのんりき
これは 実は、お経 『法華経』 の中の偈(げ)で、「念彼観音力 刀尋段段壊 (ねんぴかんのんりき とうじんだんだんね」 というのが 元のようです。
こう唱えると、なにかしら 元気がでてきます。
見えない力で 前へ前へと押し出されるような、不思議なエネルギーが湧いてくるのです。
それもそのはず、このお経の意味は
かの観音の力を念ずるときは、怨敵に刀の害を加えられても、その身は害せられず、かえって敵の刀が寸断に折れ壊れる」 というのです。
言霊というものなのでしょう。


やさしさといっしょに 祖母からもらった これらの言霊を いつまでも大切にしたい、心から そう思っています。