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営業こそが会社を興す

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ある季刊雑誌で、3時間半の新幹線社内販売で 187個の弁当を売った記録を持つ 山形新幹線社内販売員・斎藤 泉さんのインタビュー記事をみた。

「背中に眼がある」と評されるほど 乗客のニーズを敏感に察知する彼女の言葉は、とても魅力的だ。
バリバリのやり手にありがちな どぎつさは微塵も感じられず、思いやりのある あったかい人柄が伝わってくる。

彼女は、きっと 営業の面白さを素直に感じているのだと思う。
そして そこに留まらず、もっと売れるように自分で考えて工夫し、乗客の心を理解できる自分を磨き、ひとりでは何もできないことを謙虚に認識して 協力者を巻き込んでゆく 熱意と賢さを備えているのだろう。

彼女は こう語っている。


仕事や待遇には 不満がいっぱいあります。
ただ、愚痴を言うだけじゃ 何も変わらないから、それを解決する方法を いつも考えるようにしていました。
実績のない販売員の言うことなんて 誰も聞いてくれません。
だから、まずは結果を出さなければ と思ったのです。



彼女の視線は、あくまでもお客様に向いている。
上司や ひいては社長は、そのための方策に過ぎない。
会社から 「正社員になれ」と言われても、パートタイマーという立場を貫いている。

「お客様にとっては、その販売員がパートだろうが社員だろうが まったく関係ない話です。」
そう言い切るのだ。

この 斎藤さんのインタビュー記事をみて、私は 胸にグサっと来るものを感じた。
それは、私がとってきた30年間の営業姿勢に対する 痛烈な批判と自覚できたからだ。
中途半端な技術経営者にありがちな落とし穴なのだが、メーカー会社は技術と営業が両輪である と口にしておきながら、その実 営業を技術の下に置いている。

「誠心誠意 当社の製品の良さを口説いて来い。それで判ってもらえないのなら、縁がなかったものと諦めてよい。」
これは、自分が営業に出かけるときの また 営業に出かける社員を送り出すときの 私の口癖だった。
この言葉の裏には、判ってくれない客の方が悪い という傲慢さが隠されている。
視線がお客様の方ではなく、自社の製品のうぬぼれた優秀さに向いている証拠である。

技術は うまくやれば 継承できるかも知れない。
しかし、営業は その営業マン一代きりである。
誰にも真似はできない。
なぜなら この世に二人として同じ人間はいないのだから。

斎藤さんも インタビューのなかで、 「結局は、お客様にどんなアプローチをしていくか は、その人次第です。」 と、 話ている。
一代きりの営業マンが受け継げる唯一のもの、それは 「営業こそが会社を興す」という プライドであろう。

当社の営業マンも このプライドを持って 謙虚にお客様に接して欲しいと、自分の至らなかった営業姿勢を反省して、つくづくと思うのである。