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臍下丹田 (せいかたんでん)

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ある年齢に達すると、美意識も変わってくるらしい。
動ではなく静に、急ではなく緩に、目が向いてしまう。

最近、気品のある人を見かけると とても美しいと感じるようになった。
気品のある人は、どこが違うのだろうか。

ひと言では なかなか言い表しにくいが、強いて言えば、立ち居振る舞い、物腰、ということになる。
早口でも せかせかしていない、てきぱき動くのだけれど どっしりしている、そういう落ち着きだ。

臍下丹田(せいかたんでん)という言葉がある。
へそ下3cmのところで、道教でいうところの不老不死の薬である丹薬を練る場所である。
戦前生まれのように、伝統的身体文化になじみのある人にとっては 耳慣れた言葉であるが、
いまの世では 死語に近い。

上虚下実、つまり上半身は柔らかく 下半身は力強く、いわゆる自然体が無理なく身についている人。
気品ある人の立ち居振舞いを見ていると、上虚下実という言葉がぴったりだ。
上虚下実のキーポイントが、臍下丹田である。

気功太極拳を習いたての頃、この臍下丹田が なかなかピンとこなかった。
今でも マスターできているわけではない。
生活習慣として腰肚文化を身に付けていない者にとって、臍下丹田のような抽象的な表現は 理解しがたいものである。
私は、的を得ていないかもしれないが、気功太極拳において臍下丹田を意識せよ と言われたときは 尾てい骨を意識するようにしている。
そして、尻の穴をぎゅっとすぼめるようにする。すると、「下実」の実感が湧いてくる。

ほんとうの自然体は、体全体がふにゃふにゃの状態ではなく「下実」がなければならない。
それがあって 初めて「落ち着いた物腰」になれるし、気品ある人に近づけるのだと思う。

気功太極拳を長くご指導いただいた西村加代先生が、ご都合で 私どもが受けている曜日の講座を 退かれることになった。柱をなくしたような さびしさである。
その講座を 来年から 私が受け持つことになった。
未熟者がひとさまに教えるなどと おこがましいのもはなはだしいが、西村先生からいただいたこのチャンスを、 自分なりの方法で とりあえず1年間 お受けすることにした。
達人の教えにはついていけなくても、'開発途上'のちょっと先輩と共になら、ついてきてくれる仲間もいてくれるだろう。

臍下丹田は、気功太極拳においても キーポイントである。
臍下丹田が 生活習慣として捕らえる機会が少ないのなら、技として鍛えるしかない。