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新居浜に住んでいた頃、季刊の『暮らしの手帳』を欠かさず家内は、登道の明屋書店で買い求めていた。 半世紀も前のことである。 私も興味深く愛読していたので、『暮らしの手帳』に藤城清治のモノクロ影絵が連載されていたのを、うっすら覚えている。 もっとも、藤城清治という名前は、藤城ファンの家内から最近聞き知ったのだが… 那須高原に藤城清治美術館があることを旅雑誌で知って、元気なうちに訪ねてみたいと家内が言い出した。 意を決して、一泊二日の旅に出た。
影絵というのは、バックライトがあって初めて生かされる。 那須高原にあるこの劇場型美術館は、影絵のこの本質を熟知した設計によって、印刷物で見る藤城影絵よりはるかに印象的な作品をみせてくれる。 影絵にちょっぴり抱いていた侮りが、館内をめぐるうち、心が震えんばかりの感動と化していった。
はるばる来た甲斐があった。 藤城氏がこの那須高原に美術館を作りたかった理由も、よく理解できた。 藤城影絵を那須高原で味わえて、幸せであった。
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