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興福寺南円堂の不空羂索観音菩蔭像

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いま、興福寺の南円堂と北円堂の国宝特別公開がおこなわれている(今月10日まで)。
南円堂の内部に初めて入る好機と、休日を利用して奈良を訪れた。

南円堂の中尊は、三目八臂の不空羂索観音菩薩。
作者は、運慶の父康慶とその一門と知られている。
この像のお姿は、運慶以後の鎌倉仏にくらべ柔らかでおおらかである。
その理由は、どうも目にあるらしい。

鎌倉仏の特徴の一つは玉眼であるが、目が鋭くなる。
康慶は、天平仏のやさしいお顔をまもりたかったのであろう、本像の三眼は彫眼とし、瞳の部分だけ刳り抜き、ここに内側から玉眼を嵌入している。
康慶は、新しい玉眼技法によって、古い瞳嵌入技法(瞳の部分にだけ黒石などを外側から嵌める技法)の効果をねらったものと思われる。

南円堂の不空羂索観音菩薩像と対面して、康慶はやはり慶派興隆の礎だと、納得できた。